小さな頃から控えめな性格だった僕にとって、
運動会は苦手イベントだった。
人前で注目されるのが嫌いで、
徒競走はいつもビリかビリから2番目。
今年もきっと同じだろうと、
憂鬱な気持ちだった。
周りの子供たちは、
本番を前に元気いっぱいに走り回っている。
そんな彼らを見て、
僕だけ取り残されたような気持ちになった。
そんな僕は学校から帰ると、
ひとりで近くの川辺へ行き…走った。
はぁはぁ。
僕はこの時、早く走れるようになりたい。
という気持ちよりも
みんなに置いていかれたくない。
そんな気持ちだった。
迎えた運動会の当日。
周りは楽しさと興奮で賑わっていた。
その様子に僕はまた憂鬱な気持ちになった。
それでも僕は、練習をしてきたことを思い出し、
少しだけ勇気を出してスタートラインに立った。
ピストルが鳴り、周りの子供たちが勢いよく飛び出す。
僕はいつも通り、少し出遅れた。
でも、諦めずに必死に足を動かした。
周りの声が聞こえなくなるくらい、
自分の世界に集中した。
いつの間にか、僕は先頭を走っていた。
そして、ゴールのテープが見える。
心臓がバクバクと音を立てている。
周りの景色がぐにゃぐにゃと歪んで見える。
僕は駆け抜けた。
気が付くと、僕は
両手を突き上げてガッツポーズをしていた。
周りの子供たちから歓声が上がり、
先生からも笑顔で褒められた。
あの日、僕は初めて人前で自分の力を発揮できた。
そして、何よりも自分自身を信じること ができた。
あの経験から、僕は少しずつ自信をつけることができた。
そして、今では人前で話すことも苦にならなくなった。
運動会でかけっこに勝ったこと・・・
いや。練習の成果を出せたことが
僕にとって人生の転機となった。
あれから僕は、
新しい一歩を踏み出すことができたのだ。