夏が始まった。
祭りやフェスなどの野外イベント。
様々なイベントが開かれる。
年々暑くなる昨今、楽しみを得るのも一苦労だ。
それでも感動を求め、楽しさを求め、
夏のイベントに足を運ぶ多くの人。
そして俺の出番もやってくる。
この中には保冷材やファン。
俺の首には冷えたタオル。
外の気温より5℃から10℃暑いだろう。汗が止まらない。
今日の俺はひとのキャラクター。
子どもたちから、ちょっと人気者。
俺の何とも言えない全身のバランスが好奇心を誘う。
俺の奇妙な小刻みな動きが笑いを誘う。
俺の目に映る子どもたちの笑顔と
俺の耳に聞こえる子どもたちの、はしゃぐ声。
これが俺の原動力。
人が集まる時期こそ俺の活躍時。
暑いからと立ち止まってはいられない。
イベントも終盤。
俺は最後の休憩を終え、キャラクターになる。
「よし!行くぞ!」
会場に出ると、僅かながら待っていた子ども。
またその表情と声に元気をもらう。
俺は再び一瞬で汗まみれ。
それでも汗まみれで俺に向かってくる子どもたちの期待に応える。
「それじゃみんなまたね!」
明るい女性の声がイベントの終わりを告げる。
俺は最後に手を振って会場を後にする。
「お疲れ様でした」
その女性は俺にジュースを手渡した。
「子どもが楽しみにしてたんです。
ありがとうございました。」
そう言って頭を下げ、笑顔で小走りにその場を立ち去った。
俺は緊張が解けたからか
胸から込み上げる感情を抑えることが出来なかった。
「やってて良かったぁ」
心からそう思えた瞬間だった。