popoのブログ

超短編(ショートショート)

サンキュー!

熱い陽射しが降り注ぐゴルフ場。

初々しいゴルフウェアに身を包んだ俺は、

緊張した面持ちでティーイングラウンドに立っていた。

そして俺の隣には、

陽気な笑顔を浮かべる外国人青年、マイケルがいた。

 

俺たちは言葉の壁という大きな壁に直面していた。

俺は英語が得意ではなく、

マイケルは日本語がほとんど話せない。

それでも、俺たちは必死に身振り手振りで

会話をしようと努力してきた。

ジェスチャーと片言とも言えない程の英語で。

でもそれは、意思疎通とは言い難かった。

正直伝わっているのは、伝えたい10%ほどだろう。

それでも、俺たちはいつも笑顔で互いを尊重し、

コミュニケーションを図ろうとしてきた。

 

そんな俺たちにとって、初めてのゴルフは特別な日だった。

俺は初心者。この日の為に、少し練習をした程度。

比べてマイケルは、たぶん上手だと言っているのだろう。

 

プレーが始まると、言葉の壁を越え、心を通わせようと、

マイケルはゆっくりとしたジェスチャー

ゴルフのルールやマナーを丁寧に説明してくれた。

 

マイケルの伝えようとする気持ちはとても優しかった。

俺は最初、戸惑いながらも、

マイケルの熱意に笑顔を見せ始めた。

マイケルは、俺の小さな成功を大きな声で称賛し、

ミスに対しては励ましの言葉をかけた。

言葉はなくても、俺たちは

ゴルフを通して互いの気持ちを感じ取っていた。

美しい景色を眺めながら、爽やかな風を感じながら、

俺たちはひたすらボールを打ち続けた。

 

時には、マイケルの豪快なショットに驚いたり、

俺のゆっくり過ぎるパットにマイケルが笑ったり。

言葉にならない感情が、ゴルフを通して自然と溢れ出していた。

 

ラウンドを終え、クラブハウスに戻ると、

俺たちは達成感と充実感に満ち溢れていた。

言葉は少なくても、二人は互いを理解し、

心を通わせることができたことを実感していた。

 

"Thank you for today. I had so much fun."

 

当時、俺はその言葉の意味も分からなかったが、

サンキューだけが聞き取れて、

俺も「サンキュー!」と笑顔で返した。

 

俺たちの友情は、その日から確実に深まった。

ゴルフは、言葉の壁を越えて、二つの心を繋ぐ架け橋となった。

 

そして今俺たちは言葉の壁を乗り越えて

ハワイのゴルフ場に立っている。

 

「Let's get started!」