popoのブログ

超短編(ショートショート)

黄色の花束

桜が咲き始める少し前、

陽だまりのような黄色い花が街を彩る季節。

花屋に並ぶミモザを手に、俺は少し照れながら、

彼女の家に向かっていた。

 

俺は、いつも明るく前向きな彼女に支えられてばかりいた。

仕事で落ち込んだ時も、彼女の笑顔と優しい言葉に励まされ、

何度も立ち上がることができた。

 

「ありがとう」の気持ちを伝えたい。

そんな思いから、俺はミモザを選んだ。

ミモザ花言葉は「感謝」。

彼女の存在への感謝の気持ちを、

この鮮やかな黄色い花束に込めた。

 

ピンポーン。

 

彼女の家に着いた俺は背中に花束を隠した。

 

「ごめん。遅くなった。」

「ううん。いいよ。入ってきて。」

 

俺はゆっくりとドアノブを回した。

同時にドキドキが俺の心臓を襲っていた。

 

部屋に入ると一目散に彼女のもとへ向かった。

 

リビングの扉を開ける。

 

すると、そこには彼女が立っていた。

俺の顔を見てニヤッと笑う。

 

「いつもありがとう。これからも、ずっとそばにいてね。」

 

彼女は笑顔でそう言って、黄色の花束を俺に手渡した。

 

俺は驚きと喜びで思わず目から涙が溢れ出した。

感謝の涙、喜びの涙、そして愛情の涙だ。

 

「ねぇねぇ。ところで何持ってるの?」

 

あ!そうだった!

 

俺は花束を持っている。

 

でも・・・

 

「ねぇ?」

 

「あっ…その…」

 

「いつもありがとう。」

 

 

二人の時間が一瞬止まる。

 

 

「なにそれ!かぶっちゃったじゃん!」笑

「あははは…。なんかごめん。」苦笑

 

「バカ!」

 

「ありがとう。」

 

ミモザの甘い香りに包まれながら、

俺たちは甘い時間を過ごした。