popoのブログ

超短編(ショートショート)

キャディーの朝

朝日が昇る中、ゴルフ場のクラブハウスには、

若者たちの気だるい声が響いていた。

その中に、ひと際明るい笑顔の女の子、栞がいた。

彼女は、このゴルフ場でキャディーとして働いていた。

 

栞は、まだゴルフのルールもよくわからないまま、この仕事を始めた。

最初は、クラブの名前も分からず、

お客様に迷惑をかけてしまうのではないかと、毎日ドキドキしていた。

しかし、ベテランのキャディーたちに優しく指導してもらい、少しずつ成長していく。

 

ある日、栞は、いつも通りの笑顔で、お客様をお迎えした。

そのお客様は、会社の役員を務める、厳つい風貌の男性だった。

栞は、緊張しながらも、一生懸命にクラブを運び、コースの説明をした。

 

「キャディさん。お名前何て言うんだ?」

「え…しおりです。」

「ハハハ。下の名前を言うのか。」

「あっ!すみません。」

「いや。いや、いいんだ。」

「しおりさん。キャディーの仕事は、ただボールを追いかけるだけじゃないんだ。」

 

突然、男性が言い出した。栞は、ハッとした。

 

「お客さんのプレーをサポートするのは当たり前だ。

でも、それ以上に大切なことがある。それは、お客様の心に寄り添うことだよ。」

 

男性は、深呼吸をして続けた。

 

「例えば、お客さんがミスショットをして、悔しがっている時、

ただ黙って見ているのではなく、

励ましの言葉をかけてあげることが大切だよ。」

 

栞は、その言葉の意味を深く理解した。

それからは、お客様の表情をよく見て、言葉をかけるようになった。

 

ある日、常連のお客様が、

いつも以上にスコアが悪く、沈んでいる様子だった。

栞は、勇気を振り絞って声をかけた。

 

「○○さん、今日はちょっと不調ですね。

でも、〇〇さんのスイングは、今日も。いつも。素敵ですよ。」

 

すると、お客様は、少し笑顔を見せた。

 

「ありがとう。君のおかげで、少し気持ちが楽になったよ。」

 

その言葉に、栞は、大きな喜びを感じた。

 

栞は、キャディーの仕事を通じて、

たくさんの人と出会い、たくさんのことを学んだ。

そして、自分自身も成長していく。

 

ある日、ベテランのキャディーが、栞にこう言った。

 

「栞は、キャディーの仕事を楽しんでいるね。

それは、お客様にも伝わっているよ。

栞のようなキャディーがいて、私は嬉しいよ。」

 

栞は、ベテランのキャディーを思わず抱きしめた。

 

「おはよう!今日も素敵な笑顔だね!」

 

「ありがとうございます!」

 

栞は、笑顔を忘れずに、

お客様との出会いを大切にし、寄り添う。

 

「さあ!頑張りましょう!」