popoのブログ

超短編(ショートショート)

桃の花

小さな頃、母に連れられて訪れた公園。

まだ薄暗い早朝、木々の枝には色とりどりの提灯が飾られ、

甘い香りが漂っていた。

それは、桃の節句を祝うための飾り付けだった。

 

幼い私は、鮮やかな桃の花に目を奪われた。

ピンク色の花びらは光を受けて輝き、

まるで宝石のようだった。

私は母の手に抱かれ、その花びらをそっと触った。

柔らかい感触と甘い香りに、心は喜びでいっぱいになった。

 

母は、そんな私を見て微笑んだ。

「これが桃の花よ。女の子の節句のお祝いなの。」

「ママ・・・。」

「そうあなたの名前と同じ名前。桃の花よ。」

 

その日以来、桃の花は私にとって特別な存在となった。

毎年、桃の節句が近くなると、

あの日のワクワクした気持ちが蘇ってくる。

 

成人した今でも、私は桃の花を見ると、

あの日の記憶を鮮明に思い出す。

母に抱かれながら見た桃の花、その甘い香り、

そして母の優しい笑顔と優しい言葉。

 

あの日以来、私はたくさんの経験を積んできた。

喜びも悲しみも、成功も失敗も経験した。

しかし、どんな時も、桃の花を見ると思い出すあの日の気持ちは、

私の心の支えとなっている。

 

それは、純粋な喜びと希望の気持ち。

それは、どんな困難も乗り越えられるという強さ。

 

「桃」そう。それは私の名前。

 

桃の花は、私にとって単なる花ではない。

それは、母への愛の象徴であり、

そして、私自身の心の成長の証でもある。

 

今年もまた、桃の節句がやってきた。

私は、家の玄関に桃の花を飾った。

そして、目を閉じて、あの日の記憶に浸った。

 

母への感謝の気持ち、そして、未来への希望。

桃の花は、私に大切な気持ちを思い出させてくれる。

 

これからも、私は桃の花と共に歩んでいく。

あの日のワクワクした気持ちを忘れずに。