popoのブログ

超短編(ショートショート)

必死に生きてこそ

荒れ狂う嵐の中、一隻の小さな漁船が

絶望の淵に立たされていた。

老船体は波に翻弄され、

幾度となく転覆寸前まで追い詰められていた。

船上には、嵐に打ちのめされ、

憔悴しきった漁師の老人がただ一人。

 

かつては村一番の腕利きの漁師だった老人も、

今はもう齢八十を越え、体力も気力も衰えていた。

しかし、彼は諦めなかった。

家族のために、村のために、必死に生き抜かなければならない。

 

老人は渾身の力を振り絞り、舵を操る。

しかし、容赦ない波は容赦なく船を襲い、

老人の体は徐々に限界に近づいていく。

 

ふと、老人は幼い頃に父親から聞いた言葉を思い出した。

「必死に生きてこそ、生涯は光を放つ」。

 

その言葉は、苦難に直面するたびに老人の支えとなってきた。

どんな困難も、決して諦めずに立ち向かうことが、

人生を輝かせる唯一の道なのだと。

 

老人は決意を新たにする。

たとえどんな苦難が待ち受けていようとも、彼は決して諦めない。

家族のために、村のために、そして何より、

自分自身のために、彼は必死に生き抜く。

 

嵐は依然として猛威を振るっていたが、

老人の目は力強く輝いていた。

彼の心の中には、不屈の闘志が燃え盛っていた。

 

そして、ついに奇跡が起こった。

嵐は突如として収まり、穏やかな海が広がった。

 

老人は船を岸へと導き、力尽き果てて倒れ込んだ。

しかし、彼の顔には安堵と喜びの表情が浮かんでいた。

 

「ハハハ。なんて楽しいんだ!」

 

彼は生涯、必死に生き抜いた。

その中で人生の楽しさを知った。

 

そして、その生涯は確かに光を放っていた。