popoのブログ

超短編(ショートショート)

開く

「お供え物のお餅を食べましょう」

そう言ってママが食事の準備に入る。

僕はお餅が大好き。

だけどなぜか我が家では

決まって食べるのはこの時期だけだ。

「さあ。お餅を持ってきて。」

僕は足早に飾ってあった場所に向かう。

パンパンと手を合わせ

「ありがとうございました。」とお餅を取る。

お雑煮かな?焼くのかな?

なんて想像しながらママに届ける。

手にはハンマーみたいなものを持っている。

(ママ・・・ちょっと怖い。)

鏡餅はね、包丁で切ってはいけないのよ。」

「じゃあそれで割るの?」

「割るって言っちゃダメ。お餅は開くって言うの。」

「なんで?」

「良いことが起きますようにって

 良い道を開いてもらうのよ。」

「おまじない?」

「うん。そんなようなものね。」

「じゃあ。やってみる。」

僕はママからハンマーのようなものを受け取って

開いてみた。

「ママ。割れない。」

「もう一回やってみよう。」

ママはそう言って僕の手を握った。

そして一緒に振り下ろす。

「ママ!割れた!いっぱい割れたよ!」

「いっぱい開けたのよ。」

(あ!そうだった。)

ちょっと恥ずかしい気分にもなったけど

こういう行事が我が家にはある。