「お供え物のお餅を食べましょう」
そう言ってママが食事の準備に入る。
僕はお餅が大好き。
だけどなぜか我が家では
決まって食べるのはこの時期だけだ。
「さあ。お餅を持ってきて。」
僕は足早に飾ってあった場所に向かう。
パンパンと手を合わせ
「ありがとうございました。」とお餅を取る。
お雑煮かな?焼くのかな?
なんて想像しながらママに届ける。
手にはハンマーみたいなものを持っている。
(ママ・・・ちょっと怖い。)
「鏡餅はね、包丁で切ってはいけないのよ。」
「じゃあそれで割るの?」
「割るって言っちゃダメ。お餅は開くって言うの。」
「なんで?」
「良いことが起きますようにって
良い道を開いてもらうのよ。」
「おまじない?」
「うん。そんなようなものね。」
「じゃあ。やってみる。」
僕はママからハンマーのようなものを受け取って
開いてみた。
「ママ。割れない。」
「もう一回やってみよう。」
ママはそう言って僕の手を握った。
そして一緒に振り下ろす。
「ママ!割れた!いっぱい割れたよ!」
「いっぱい開けたのよ。」
(あ!そうだった。)
ちょっと恥ずかしい気分にもなったけど
こういう行事が我が家にはある。