俺は一枚の写真を目にした。
それは、過去の同僚と再会して
男同士が熱く抱擁する写真だった。
俺は昔、いつも一緒にいる友人がいた。
学校も同じで、職場も同じ。
食事するときも休日も
常に一緒の時間を生きていた。
俺たちは建設会社で営業をしていた。
たまたま仕事が重なった俺は、
一人の客を友人に任せた。
チェーン展開する店舗の仕事だった。
工事は順調に進んだ。
完成まであと数日。
その時、一通の手紙が会社に届いた。
「自己破産の申し立て」
どうやら他店の経営が悪化し
新店舗開店を前に、自己破産となった。
会社への損害は大きかった。
「責任を取れ!」
担当になった友人は会社を退職に追い込まれた。
それからというもの、
俺との会話。俺との時間。は
なくなった。
俺はあの時、言葉が見つからなかった。
「ごめん。ほんと。ごめん。」
「お前のせいじゃないから。」
「ごめん。ごねんな。」
このやりとりが最後だった。
数年たったある日、
俺は会社の新しい仕事に着手することになった。
その仕事は二つの建設会社で
共同して行う仕事だった。
顔合わせの日。
ホテルのロビーで待ち合わせをした。
「この度はよろしくお願いします。」
「こちらこそ!よろしくお願いします。」
握手を交わす俺は力強く握った。
相手は俺の友人だ。
「いい仕事をしよう!」
俺たちの新しい時間がこの時から始まった。
今日、俺はそんな友人と食事をしながら
一枚の写真を見ている。