popoのブログ

超短編(ショートショート)

小さな村

小さな漁村。

美しい海と山に囲まれたこの村は、

昔から漁業で栄えてきた。

しかし近年、海の環境悪化により、

漁獲量も減少し、村の人々の生活も苦しくなっていた。

 

少年は、今日も海辺で遊んでいた。

海を見つめながら、おじいちゃんから聞いた話を思い出していた。

「昔は、この海にはもっとたくさんの魚がいたんだ。

でも、最近はどんどん減っているんだよ。

それは、人間が海を汚しているからなんだ。」

 

少年は、おじいさんの言葉を思い出しながら、

海辺に散乱するゴミを見て悲しくなった。

そして、何か自分ができることはないかと考え始めた。

 

少女は村の中心部にある一本の桜の木が大好きだった。

どこかに出かけるときも、

この木を眺めるために遠回りをしていた。

しかしある日こんな言葉を耳にした。

「この木が邪魔なんだ。なあ切り倒してくれよ。」

「この木のせいで道が狭いんだ。」

 

少女は、その言葉を思い出しながら、

桜の木を見て悲しくなった。

そして、何か自分にできることはないかと考え始めた。

 

「先生!今日はみんなでゴミ拾いをしませんか!?」

先生は少年の言葉に耳を傾けた。

「海のことを心配しているんだね?ありがとう。」

「海をきれいにしないと、お魚が減っちゃうって。

おじいちゃんに聞いたんだ!」

 

「村長さん!あの桜の木…なくなっちゃうの?」

村長は少女の言葉に耳を傾けた。

「そうだな。みんなが道の邪魔になるって言うんだ。

なんだい?さみしいのかい?」

「うん。」

今にも泣きだしそうな少女の表情を見て、

「どこかに移すとしたら、お嬢ちゃん手伝ってくれるかい?」

「あの木は残るの?」

「ああ。どこか違う場所で残そう。」

 

その日の海辺はゴミ袋を持った子供たちでいっぱいだった。

綺麗になっていく海辺を楽しんでいた。

 

その日の村の中心部は賑やかだった。

村中の大人が集まって少女が見守る中、

新しい場所に桜の木が移された。

 

今ではこの漁村の漁獲量は全国一。

この国の代表的なきれいな海になった。

 

今では桜の木はこの村の神木とされている。

多くの町からこの木を見るためにひとが集まる。

 

小さな少年と小さな少女の言葉が

この小さな村を変えたのだった。