popoのブログ

超短編(ショートショート)

美しい地球

2XXX年、砂漠化が進行した地球。

かつて豊かな水資源を誇った地域も、

今ではわずかな水滴が命綱となっている。

 

10歳の少女、リサ。

水不足に苦しむ村で、

祖母から受け継いだ古い絵本を大切にしながら暮らしている。

絵本には、かつて水が豊富だった頃の

美しい地球の風景が描かれていた。

 

ある日、村で唯一の井戸が枯渇してしまう。

村人たちは絶望に陥り、水を求めて争い始める。

俺が先だ。俺が先だ。と騒ぎ立てる。

リサは、絵本に描かれた伝説の泉を思い出す。

「この水があれば・・・」

リサは泉を探す旅に出る。

 

旅は過酷を極めた。

灼熱の太陽、容赦ない砂嵐、そして限られた水。

周りには倒れた人たち。

リサ自身も何度も諦めそうになる。

「絶対に…絶対に…見つけるんだ」

リサは絵本に描かれた希望を胸に、

決して歩みを止めなかった。

 

「あった!あったよ!ほんとうにあった!」

長い旅の末、リサはついに伝説の泉にたどり着く。

しかし、泉は枯れ果てていた。

絶望するリサ。

もう村に戻る気力もなかった。

最後にもう一度だけ絵本を読もう。

リサはバッグから絵本を取り出した。

絵本に描かれた美しい地球の風景。

その時、一文に目が留まる。

 

「水を大切にすれば、泉は再び湧き出る」。

 

リサは何か思いついたかのように、

もう一度、気持ちを奮い立たせて村へと戻った。

 

「みんな!聞いて!」

 

「お願い!聞いてよ!」

 

リサは村人たちに、水の大切さを訴えた。

 

「みんなで力を合わせて水を節約しよう!」

 

「大切に使おう!」

 

まだ幼い子どもの一生懸命な訴えに、

その言葉を聞いた村人たちは

ひとり。またひとりと。耳を傾ける。

やがて賛同する村人たちの輪ができた。

そして気が付くと、争いもなくなっていた。

 

「水を大切にしよう!」

 

「水よ!ありがとう!」

 

村人たちは空に向かって叫んだ。

 

次の朝、村の外れから声がした。

「おーい!おーい!大変だぁ!」

村人たちは大騒ぎだった。

リサはその様子に、もしかして!と思い

再び泉に向かった。

 

(ハァハァ。)

 

泉に着いたリサは驚いた。

そこには、奇跡が起こっていた。

枯れ果てていた泉から再び水が湧き出ている。

 

「やったぁ。やったあ!」

「おばあちゃん!やったよ!」

「ありがとう!!」

 

村人たちは喜びに溢れ、

リサは絵本に描かれた美しい地球の風景を思い浮かべる。

そして、水の大切さを胸に、未来へ向かって歩き出した。

この絵本の中にある世界が

また訪れることを願って。