popoのブログ

超短編(ショートショート)

人魚の涙

それは遥か昔、まだ人間が

宝石を身に着けることを知らない時代。

 

海辺の小さな村に美しい少女がいた。

少女は、満月の夜になると海へと足を運び、

波の音を聞きながら、大海原に思いを馳せるのが日課だった。

 

ある夜、激しい嵐に見舞われた村。

翌朝、少女は砂浜が気になり海辺を訪れた。

するとそこには、まるで満月のような光を放つ

不思議な貝が打ち上げられていた。

 

少女は、その貝が中に、

美しい光を宿していることに気づいた。

 

好奇心から、少女は貝を割ってみる。

すると、中から小さな光る球体が現れた。

それは、まるで月の光を凝縮したような、

神秘的な輝きを放っていた。

少女はその球体を大切に胸にしまい、

持ち帰り、毎日眺めていた。

 

ある日、村の祭りの日に、

少女は、その球体を首にかけた。

すると、周囲の人々から

「なんて美しい光だ!」と称賛された。

そして、その光に照らされた少女の美しさは、

まるで月夜に咲く花のように輝き、

村人たちは、その光を「月のしずく」と呼ぶようになった。

 

時が経ち、少女と「月のしずく」の美しさは村の外にまで広まり、

多くの人々が少女のもとを訪れるようになった。

少女は、その光を人々に分け与え、村は喜びと平和に満ち溢れた。

 

しかし、中には、その美しさを妬む者も現れた。

邪悪な心を持った男は、

少女の「月のしずく」を奪おうと企み、

夜中に少女の家を襲撃した。

激しい争いの末、

少女は「月のしずく」を守り抜いたが、

父と母を失い、体と心に激しい傷を負ってしまう。

 

「ごめんなさい。」

 

傷ついた少女は、海へと駆け込んだ。

満月の光を浴びながら、

少女は静かに目を閉じ、海に身を委ねた。

 

少女の体が全て海に浸かった時だった。

少女の体から光が溢れ出し、海中に散らばっていった。

そして少女の姿はなくなった。

 

数時間の時が経ち、海は穏やかだった。

地平線には、朝日が昇ろうとしている。

すると、無数の光が海から現れた。

そして、その光は一つに集まり、

再び美しい真珠となった。

 

村の人たちは、こう話す。

「少女の魂は、その真珠の中に宿り、永遠の命を得たのだ。」

 

やがて、その真珠は「人魚の涙」と呼ばれるようになり、

人々に愛され、美しさを象徴する宝石となった。