popoのブログ

超短編(ショートショート)

ランプの灯

薄明かりが部屋に差し込み、

朝の静けさがカーテン越しに感じられた。

布団から出るのが億劫で、

くるまっている毛布に顔をうずめる。

今日も一日が始まるのか、と重たい気持ちが胸にこみ上げる。

 

何度も時計の針が動いただろうか。

ようやく布団から這い出し、窓を開けた。

冷気が部屋に流れ込み、少しだけ意識がはっきりする。

 

ため息をついた後、いつものように机に向かう。

やるべきことは山積みなのに、一向に手につかない。

焦燥感と無力感が交錯し、心がざわめく。

 

ふと視線は部屋の一角にある小さなランプに落ちた。

私はランプに近付き、スイッチを入れた。

すると部屋全体がほんの少しだけ明るくなった。

その光は、まるで私の心に直接射し込んできたように感じた。

 

「きっと、乗り越えられる。」

 

普段何気なく目にしている光が、今日は特別に輝いて見えた。

まるで、私を励ましているかのように。

そして、その言葉が私の心に小さな火を灯した。

私は少しずつ、心が軽くなっていくのを感じた。

 

ランプの光は、何も特別な力を持っているわけではない。

ただ、そこに存在しているだけで、私を照らしてくれる。

それは、まるで、誰かの温かい言葉や、優しい笑顔と同じように、

心に安らぎを与えてくれる。

 

私は、立ち上がり、部屋を歩き始めた。

 

そしてまずは、部屋を片付けることから始めることにした。

最初は億劫だったが、ランプの光を頼りに、

一つ一つ丁寧に作業を進めていくうちに、

次第に集中力が研ぎ澄まされていった。

 

気がつけば、部屋はすっかり片付いていた。

 

昔、祖母は、このランプの光には魔法がかかっていて、

どんな悩みも解決してくれる、と教えてくれた。

 

「あの時、祖母が教えてくれた魔法は、本当にあったんだ。」

 

私は深呼吸をして、もう一度、やるべきことに目を向ける。

 

小さな一歩を踏み出す勇気を、このランプの光が与えてくれた。

 

秋の冷たい風が入る部屋で、小さなランプの光は、

私の心に温かい光を灯してくれた。