popoのブログ

超短編(ショートショート)

花園から遊園地へ

昔々、この場所は色とりどりの花が咲き乱れる、美しい花園だった。

春には桜が咲き誇り、夏にはひまわりが太陽に向かって顔を上げ、

秋には紅葉が辺りを赤や黄色に染め、冬には雪が積もって銀世界へと変わる。

人々はここに訪れ、花の香りに包まれながら静かに時を過ごした。

 

しかし、時の流れとともに、花園は少しずつ衰えていった。

ある日の震災によって、花は枯れ、木々は朽ち、

かつての美しい姿は見る影もなくなってしまった。

人々は寂しい気持ちを抱きながらも、この場所は閉まってしまう。

 

そんなある日、一人の若者がこの場所を訪れた。

彼は荒れ果てた花園を見て、心を痛めた。

若者はこの花園に思い出があったのだ。

 

「このまま終わらせてはいけない」

 

若者は村人たちを集め、共にこの場所を整備し始めた。

朽ちかけた木を運び出し、新しい遊具を設置した。

滑り台、ブランコ、砂場、そして小さなメリーゴーランド。

一つ一つが手作りで、温かい心が込められていた。

 

完成した遊具を見て、子供たちは大喜びだった。

彼らは毎日ここに集まり、無邪気に遊びまわった。

大人たちも、子供たちの笑顔を見ているうちに、

いつしか自分たちも子供の頃に戻ったような気持ちになった。

 

やがて、この場所は「遊園地」と呼ばれるようになった。

遊園地は、村人たちにとって憩いの場となり、人々の心を繋ぐ場所となった。

 

年月が流れ、遊園地の遊具は古くなり、色あせていった。

それでも、村人たちは遊具を大事に修理し、新しい遊具も加えていった。

遊園地は、村人の手によって、ずっと生き続けている。

 

今では、遊園地は村の外からも知られるようになり、

多くの人々が訪れるようになった。

しかし、遊園地は決して商業的な場所ではなく、

あくまで村人たちが心を込めて作った、温かい場所であり続けている。

 

夕暮れ時、遊園地には優しいメロディーが流れる。

それは、かつてこの場所で咲いていた花々を

歌っているような、そんなメロディーだった。