popoのブログ

超短編(ショートショート)

みんなの絵

ある小さな村に、画家志望の頑固な少年、アランがいた。

アランは、「おれの絵が一番上手いんだ!」と

自分の絵が一番だと信じており、

他の画家の作品を見ることも、意見を聞くこともなかった。

 

ある日、村に有名な画家エドが訪れた。

アランは、自分の絵をエドに見てもらい、

褒めてもらいたいと考え、自慢げに作品を見せた。

「どうだいエド?うまいだろ!」

しかし、エドはアランの絵を見て、

「君の絵は、確かに色彩が豊かで力強い。」

「でも、もう少し周りの意見を聞いてみるといい。」

「同じ景色でも、人それぞれ見え方が違うからね。」

 

アランはエドの言葉にショックを受けた。

まるで自分の絵が全て否定されたように感じたのだった。

「なんだよ。それ。」

それでも、エドは優しく語りかけました。

「空を見上げてごらんなさい。」

「どうだ?この絵と同じ色か?」

「同じだよ!青いだろ?」

「そうかな?わたしはこの絵より、もう少し白く見える。」

 

アランは再び空を見上げた。

するとエドが言うように、もう少し白く見えた。

エドの話に、アランは初めて

自分の絵を客観的に見ることが出来た瞬間だった。

そして、エドだけでなく、村の他の画家や子供たちにも

自分の絵を見てもらい、意見を聞くことにした。

 

人々の意見は様々だった。

「この絵の構図は面白いね。」

「もう少し人物の表情を柔らかくすると、温かみが出るよ。」

「この色はちょっと派手すぎるかも。」

 

様々な意見を聞くうちに、

アランは自分の絵の足りない部分や、

改善できる点に気づくことができた。

そして、人々の意見を参考にしながら、

新しい絵を描き始めた。

 

完成した絵は、以前とは全く違うものだった。

色彩はより豊かになり、構図も洗練され、

人物の表情も生き生きとしていた。

村の人々は、アランの新しい絵を見て、大きく感動した。

 

「これは素晴らしい。」

「まるでそこにある風景のようだ。」

「是非、村の入り口に飾らせてくれ。」

 

アランの絵は、“おれの絵”から“みんなの絵”に変わった。

そしてアランは、この経験を通して、

自分の考えとは異なる意見を聞くことの大切さを学んだ。

 

そしてそこには、人々から好かれるアランがいた。