popoのブログ

超短編(ショートショート)

ミラノの路地裏から

ミラノの薄暗い路地裏。

石畳が雨に濡れ、かすかな明かりが漏れる

小さなトラットリアに、一人の女性が足を踏み入れた。

彼女は、幼い頃から抱いていた

イタリア料理への情熱を胸に、この地を訪れていた。

 

トラットリアのドアを開けると、

温かい空気が包み込む。

厨房から香るバジルの芳醇な香り、

そして、どこからともなく聞こえてくる陽気なイタリア語。

彼女は、この空気に一瞬で心を奪われた。

 

テーブルに案内された彼女は、

メニューをじっと見つめる。

どれもこれも食べたことがない料理ばかりで、

選ぶのに迷ってしまう。

店員に相談すると、おすすめは「ラザニア」とのこと。

彼女は迷わずそれを注文した。

 

しばらくして運ばれてきたラザニアは、

想像をはるかに超える美味しさだった。

自家製のパスタ生地は、もちもちとした食感。

濃厚なミートソースと、

とろけるようなチーズのハーモニーが、

彼女の舌を踊らせる。

一口食べるたびに、幸せが体中に広がっていくような感覚だった。

 

食後、彼女はシェフに声をかけた。

「このラザニア、本当に美味しいです。どうやって作るんですか?」

 

シェフはにこやかに微笑み、「秘密だよ」とだけ答えた。

 

その日から、彼女は毎日、

そのトラットリアに通うようになった。

するとシェフが少しずつレシピを教えてくれた。

 

彼女はそのレシピを参考に、

自分でもラザニアを作ってみる。

最初は上手くいかなくても、

何度も何度も試行錯誤を繰り返した。

 

そして、ある日、彼女はついに、

自分だけのラザニアを完成させた。

トラットリアの味には及ばないかもしれないが、

そこには、彼女の情熱と愛情が込められていた。

 

彼女は、ラザニアを通して、多くの人と出会った。

食材を厳選する市場の人々、伝統的な製法を守り続ける職人、

そして、美味しい料理を分かち合う仲間たち。

 

イタリアでの日々は、彼女の人生を大きく変えた。

彼女は、イタリア料理の奥深さを知り、

その魅力を多くの人に伝えたいと思うようになった。

 

「母国のみんなにもこの料理を知ってほしい」

 

彼女はその後帰国し、小さな料理教室を開き、

イタリア料理の魅力を発信し始めた。

 

彼女の料理教室は、たちまち人気を集めた。

参加者たちは、彼女の作る料理を味わいながら、

イタリアの文化や歴史に触れることを楽しんでいた。

 

それはまさに、彼女の、

情熱と愛情の賜物だった。

 

彼女は、これからも、イタリア料理を通して、

人々に笑顔と幸せを届けていきたいと心に誓った。

 

ミラノの路地裏で出会った一皿のラザニアは、

いつしか彼女…そう。私の。

人生を彩るかけがえのない宝物となった。