私は、毎日同じように繰り返される
満員電車の中でうんざりしていた。
改札を抜けると、都会のビル群に囲まれ、
息苦しさを感じていた。
そんなある日、いつものように
駅に向かう途中の街角で、
一組の老夫婦の姿が目に入った。
彼らは、ゆっくりと手を繋ぎながら歩いている。
ご主人は少し足を引きずり、
奥さんはそれを優しく支えていた。
二人の表情は穏やかで、
まるで世界中の人々が羨むような幸せそうな笑顔だった。
私は思わず足を止めて、その光景に見入っていた。
彼らの姿は、都会の喧騒の中でひときわ輝いて見えた。
まるで、時間がゆっくりと流れているかのような、
そんな錯覚すら覚えた。
その瞬間、私の心の中に何かが生まれ始めた。
それは、温かい光のような、優しい感情だった。
私は、今まで自分がいかに周りの人々との繋がりを
大切にしてこなかったのかを痛感した。
仕事に追われ、人間関係に疲弊し、
私は自分自身を見失いかけていたのかもしれない。
でも、この老夫婦の姿を見て、私は改めて、
人生で本当に大切なものは何かを考えさせられた。
それは、お金でも地位でも名誉でもなく、
家族や友人との絆、そして、愛なのだと。
私は、その日から少しずつ変わろうと思った。
仕事だけでなく、周りの人々との会話を大切にし、
一日という時間をもっと楽しむように努めた。
そして、いつか私も、あの老夫婦のように、
誰かと手を繋いで穏やかに人生を歩んでいきたい。
そう願うようになった。