popoのブログ

超短編(ショートショート)

コスモスを一輪

俺はいつものように休日をゆっくりと過ごしていた。

そんな時、ふと庭に咲いたコスモスが目に入った。

 

薄いピンク色の花びらが風に揺られ、

秋の澄んだ空に向かって優しく微笑んでいる。

その姿を見て、娘の笑顔が頭に浮かんだ。

毎年、新しい趣味を見つけたり、

成長したりする娘の姿に、

時の流れを感じずにはいられない。

コスモスは、可憐でありながら力強く、

まさに娘そのものだ。

 

「そうだ。コスモスを贈ろう。」

 

そう心に決めて、庭で最も美しい

コスモスを一輪切り取った。

花瓶に挿し、メッセージカードを添える。

 

「いつも元気に過ごしているようで、何よりです。

お父さんからのささやかなプレゼントです。

コスモスは、君が小さい頃に一緒に育てた花です。

あの頃の温かい記憶が蘇ります。

これからも色々なことが起こると思いますが、

お父さんはいつも君の味方です。

いつまでも笑顔でいてください。」

 

帰宅した娘はいつも通りの笑顔だった。

部屋に入ると、すぐに驚いた様子でリビングへと戻ってきた。

 

「お父さん!ありがとう!凄くきれいだよ!」

 

娘の目が輝いている。

その姿を見て、

贈った甲斐があったと心から思った。

 

次の日、娘の部屋をのぞいてみると、

コスモスは机の上に飾られていた。

そして部屋には、

コスモスの優しい香りが漂っていた。

 

時が経っても色あせることのないコスモスの花言葉は、

「乙女の真心」「調和」「謙虚」。

この花言葉のように、娘の心がいつも穏やかで、

優しいものであるようにと願わずにはいられない。

 

娘の部屋で、コスモスは静かに息をしている。

まるで、娘の成長を見守っているかのようだ。