popoのブログ

超短編(ショートショート)

レモンサワー

熱い陽射しが照り付ける、ある土曜日の午後。

エアコンの効いた部屋で、彼はソファに深く腰かけていた。

会社でのプレゼンが成功したはずなのに、心はどこか晴れない。

毎日の忙しさと暑さにやられ、体も心も重だるい。

今日は休日。ゆっくりしよう。

そう思い、冷蔵庫から缶ビールを取り出そうとしたその時、

ふと視線はレモン色の爽やかな飲み物へと向かった。

 

「今日はビールはやめて、レモンサワーにしようかな」

 

そう呟き、彼は冷蔵庫からレモンサワーを取り出した。

グラスに注ぎ、一口飲む。

炭酸が喉を通り過ぎ、爽やかな酸味が口の中に広がる。

レモンの香りが鼻腔をくすぐり、

一瞬にして彼の意識は夏の暑さから解放されたような気がした。

 

彼は窓の外を眺めた。

建物の間から覗く青い空は、どこか物憂げに見えた。

都会の喧騒が彼の耳を打ち、心は再びざわつき始める。

 

「もっと、もっと・・・」

 

彼はグラスに氷をさらに加え、レモンサワーを一気に飲み干した。

爽快感は一瞬で過ぎ去り、喉が渇いた。

彼は再びグラスにレモンサワーを注ぎ、飲み続ける。

 

レモンサワーの酸味は、

彼の心に溜まっていたモヤモヤを洗い流すように感じた。

仕事のこと、人間関係のこと、将来のこと。

様々な悩みが彼の頭を駆け巡る。

しかし、レモンサワーの爽快感が、それらの悩みを打ち消していく。

 

彼は何度もレモンサワーを飲み干した。

気が付くと外は暗くなっていて、

いつしか、彼の顔は紅潮し、目は虚ろになっていた。

彼はソファに倒れ込み、眠りについた。

 

翌朝、彼は頭痛に悩まされながら目を覚ました。

部屋の中はレモンサワーの空缶で溢れていた。

彼は昨日のでき事を思い出し、苦笑した。

 

「また、やりすぎたな」

 

彼はベッドから起き上がり、窓を開けた。

新鮮な空気が部屋の中に流れ込み、彼の肺を満たす。

彼は深呼吸をし、昨日までのモヤモヤを振り払おうとした。

 

「よし、月曜日からまた頑張ろう」

 

彼はそう心に誓い、洗面所に向かった。

鏡に映る自分の顔は、少し疲れていたが、

同時にどこか晴れやかにも見えた。

 

彼はシャワーを浴び、整えた。

そして、冷蔵庫から新しいレモンサワーを取り出した。

 

「今日は少しだけ飲もう」

 

そう呟き、彼はグラスにレモンサワーを注いだ。

 

夏の休日、レモンサワーと男の静かな闘いは、

まだ終わっていなかった。