popoのブログ

超短編(ショートショート)

愛車

「グォーン」と、エンジン音が響く。

ボンネットを開けると、そこには

長年共に走り続けた愛車のエンジンが鎮座していた。

無数の傷跡が、共に過ごした年月を物語っている。

 

「さよなら、相棒。」

 

僕は呟き、エンジンに手をやる。

この手で磨いた無数の部品、この手で交換したオイル。

思い出が走馬灯のように駆け巡る。

 

この車は、僕にとって単なる移動手段ではなかった。

大学受験のときには、遠方の予備校まで送迎してくれた。

卒業旅行では、仲間たちとの思い出を刻んだ。

社会人になってからは、仕事で全国各地を駆け巡った。

 

僕の愛車は、老朽化が進んでおり、

安全面での不安も大きくなっていた。

 

「新しい道を開くためには、君とのお別れが必要なんだ。」

 

そう心に決めても、寂しさは隠せない。

しかし、同時に、この愛車を無駄にしたくないという思いが強かった。

 

そんな時、「カーリサイクル」という言葉を目にした。

 

僕はある決意をする。

それは、この愛車を廃車にするのではなく、

リサイクルして新しい車に生まれ変わらせること。

愛車の魂を、次の世代へと繋いでいく。

 

僕は愛車と共に、

早速、リサイクル工場へと足を運んだ。

そこで、担当者に僕の思いを伝えた。

 

「この車は、僕にとってただの鉄の塊じゃないんです。

たくさんの思い出が詰まっている。

だから、この車を新しい車に生まれ変わらせてほしいんです。」

 

担当者は、僕の話を静かに聞いてくれた。そして、

 

「あなたのその熱い想いは、私たちにも伝わります。

必ず、あなたの愛車の魂を新しい車に受け継がせてみせます。」

 

そう言って、彼は力強く頷いた。

 

数ヶ月後、完成した新しい車は、見違えるほど輝いていた。

僕の愛車の部品が、どのように

新しい車に組み込まれているのか、工場見学に招待された。

 

エンジンルームを開けると、そこには見覚えのある部品が。

ハンドルに触れると、愛車の感触が蘇る。

 

「ありがとう。また一緒に出かけられる。」

 

僕は、新しい車に向かってそう呟いた。

 

この車は、単なる乗り物ではない。

それは、僕と愛車との絆、

そして、未来への希望を繋ぐ象徴なのだ。