popoのブログ

超短編(ショートショート)

ぼくの翼

小さな村に住む少年、ケンは、世界中の鳥が自由に飛ぶ姿に心惹かれていました。

彼は鳥に憧れ、いつか自分も空を自由に飛びたいと願っていました。

ある日、村に旅する謎めいた老人が現れました。

老人は杖を突きながら、ケンに声をかけました。

「君は空を飛びたいのか?君が本当に自由に飛ぶことを望むなら、この羽を受け取ってくれ。それが願いを叶えるだろう」

老人から受け取った特別な羽を手に取ったケンは、心躍らせました。

羽は彼の体にくっつきました。まさに羽が生えたような姿になったケン。

彼はその羽を身につけると、自分も鳥のように飛べるような錯覚を覚えました。

喜びと興奮が胸を満たしましたが、老人は警告しました。

「その羽はただの道具ではない。真の自由は、心の中にあるものだ。決して誇り高ぶらず、謙虚でありなさい」

ケンは老人の言葉を胸に刻み、羽を使って空を飛び始めました。

初めのうちは素晴らしい経験だったが、次第に欲が出てきました。

(高く飛びたい。みんなの前で羽ばたいて称賛を得たい。)

自由を求めるあまり、彼の心には驕りが生まれていたのです。

しかし、ある日、強い風に遭遇し、ケンは思わぬトラブルに巻き込まれてしまいます。

彼の羽は千切れ、彼は高い木の上に取り残されてしまいました。

困惑と絶望が彼を包み込みました。彼の自由は儚く、弱さを痛感しました。

孤独という暗闇の中で、ケンは老人の言葉を思い出しました。

「真の自由は心の中にある」ということを。

ケンは懸命にもがきました。「ごめんなさい。欲を出してごめんなさい。」

やがて、ケンの心は静まり、感謝の気持ちで満たされるとともに、自分の無力さを受け入れました。それはまるで、羽根が生えていなくても心に翼を持っているようでした。

すると、不思議なことに、ケンの心の中に光が差し込みました。

彼の胸には愛と思いやりの心が宿っていることに気付いたのです。

これまで人々に支えられてきたことに対する感謝。有難み。

「ありがとう」彼の顔は微笑みを取り戻しました。

自分の中の真の自由を見つけたケンは、今度は羽を手放しました。

そして解放され、自分の足で村へと戻りました。

彼は自分の経験を分かち合い、他の人にも自由の本質を伝えよう。そう思いました。

ケンの話は村中に広まり、人々に感銘を与えました。

村人たちは過ぎる欲を持たず、協力し合う温かい輪となりました。

村人たちは感謝する気持ちを大切にし、村をより豊かにする力となったのです。

ケンは以前のように自由に空を飛べることはできなくなりました。

でもケンの心は自由でした。ケンの心は豊かでした。

彼の心の中に宿る羽が、地に着いた世界での幸せを感じさせてくれたのです。