桜が舞い散る季節、彼はいつも通りの通学路を歩いていた。
いつものように並んでいる桜並木も、
今日はいつもと少し違って見えた。
それは、クラスに新しく転入してきた、
あの子の笑顔が目に焼きついているからだろう。
彼女の明るい笑顔、くるくると変わる表情、
そして、少しだけ見せる照れくさそうな様子。
彼は、そんな彼女のすべてが気になって仕方がなかった。
ある日、図書室で偶然、彼女と鉢合わせをした。
本を選ぶ彼女の横顔が、とても美しかった。
思わず見入ってしまい、慌てて目を逸らした。
「あの、もしよかったら、一緒に探しませんか?」
そんな、不意の言葉に彼は心臓が止まりそうになった。
図書室で一緒に本を探している間、
彼は何度も彼女の横顔を見てしまった。
話しかけたいのに、上手く言葉が出てこない。
そんな彼の気持ちを察したのか、彼女は優しく微笑んでくれた。
「〇〇くんって、いつも本を読んでるみたいだね」
「え、あ、うん。読書が好きで」
たどたどしい返事しかできない自分に、彼は情けなく思った。
卒業が近づき、彼はついに決意した。
最後の文化祭で、彼女に告白しようと。
「あのさ、ずっと言いたかったことがあるんだ」
緊張した面持ちで、彼は彼女を見つめた。
「どうしたの…」
彼は言葉を詰まらせる。
心臓は今にも飛び出しそうだった。
「好きです!」
彼は、自分の気持ちを全部ぶつけた。
彼女の顔が真っ赤になった。
そして、少し考えてから、
「私も、〇〇くんのことが好きです」
そう、静かに告げられた。
卒業の日、桜並木の下で、二人は手を繋いだ。
「また会おうね」
そう言って、彼女は笑顔で彼を見つめた。
あの日の桜並木の下での出来事は、
彼の心に永遠の思い出として刻まれた。
そんな初恋のラブストーリーをふと思い出した。