その日は朝廷からの客人へ年賀の答礼を行う日。
「違う!何度言ったらわかる。」
「早くせよ!」「やりなおせ!」
接待する者は、指南する者に注意を受ける。
その言葉の一言一言が・・・。
(もう我慢できん!)
うあぁぁぁぁl
刃物を持った接待役は指南役を襲う。
「おやめください!」
「殿中でござる!」
周りの声など耳にすら入らなかった。
「なにぃ!?」
その出来事はすぐに将軍の耳に入った。
「大事な儀を汚しおって!即刻捕らえよ!」
この時代は“喧嘩両成敗“が通例ではあった。
しかし捕らえられたのは接待役の者だけだった。
「即日切腹じゃ!」「いいわけは一切聞かん!」
「藩もつぶせ!みな追い出せ!」
家臣は捕らえられた接待役と最後の言葉を交わす。
「かねてから知らせておこうと思っていたが、
今日のことはやむを得ず行ったことである。」
この言葉が衝動的な出来事ではないことを物語っていた。
“仇討ち“
そこから主君を失った者たちの指南役への復讐劇が始まる。
浪人となった家臣たち。
「もういいです。ゆっくり暮らしたい」
「即刻討ち入るべきだ」「慌てるでない」
家臣の間でも様々な意見が飛び交った。
町でも「討ち入りするのでは?」と噂がまわった。
すると護衛も厚くなり、警戒された。
指南役本人の行方も定かではなくなっていた。
ある日そんな中で「茶会が開かれる」
という情報が浪人たちの耳に入る。
(その日は確実に居る!)
12月14日早朝
「黒の小袖に手を通せ」
覚悟を決めた47人の浪士は敵討ちを決行した。
奇しくも“14日“という日は主君の命日だった。
「隣地の方々。
主人の敵ゆえ、ただ今屋敷に押し込みました。
騒ぎになることと存じますので、
あらかじめご案内申し上げます。」
その言葉に周りは一切騒がなかった。
討ち入り後に浪士はこう歌った。
「あら楽 思は晴るる 身は捨つる 浮世の月に かかる雲なし」
思いを晴らし死ぬことになったが、
人生の最期に思い残すことはない。