popoのブログ

超短編(ショートショート)

オルゴール

4月の終わり、町の外れにある一軒家。

夜風が激しく窓を叩きつけ、バンバンと音を立てる。

部屋の中は、古いオルゴールの音が

不気味に響き渡っていた。

 

そこに住むのは、1人暮らしの老女。

老女は、夫を亡くして以来、

ずっとこの家で孤独な生活を送っていた。

 

その夜、老女はいつものように

オルゴールを聞きながら、編み物をしていた。

しかし、ふとオルゴールの音色が

変わっていることに気づく。

 

音色は歪み、不気味な響きを帯びていた。

老女は背筋がぞっとし、オルゴールを止めた。

 

すると、突然、部屋の明かりが消えた。

老女は慌てて懐中電灯を灯し、辺りを照らした。

 

その時、窓の外に人影を見た。

 

老女は恐怖で声も出ない。

影は窓に近づき、部屋の中をじっと見つめていた。

 

老女は目を閉じて、必死に念を送る。

(助けてください!誰か…助けて!)

 

すると、突然、影が消えた。

 

窓の外には誰もいない。

そしてまた強い風がバンバンとあたる。

 

老女は震える手で電話を取り、息子に電話した。

 

トゥルルル。トゥルルル。

 

老女はまた驚いた。

電話の呼び出し音が近くから聞こえたのだ。

 

「きゃぁあああ!たすけて!」

 

次の瞬間、玄関が開いた。

 

足音が小走りに近づいてくる。

 

老女は声を失い震えていた。

 

部屋の扉が開く。

 

 

 

ギィィィ…

 

 

 

「おばあちゃん!誕生日おめでとう!」

 

「どうしたんだ?おふくろ。電球切れたのか?」

 

老女は何が何だかわからず固まった。

 

「今日誕生日だろう?息子が会いたいって言うから

サプライズで来たんだよ。」

 

「おめでとうな。」

 

そう言って孫から老女に

新しいオルゴールが手渡された。

 

「心臓が止まると思ったわよ。」

 

「ん?嬉しくてか?」

 

「そうね。そうよ。」

と苦笑いする老女だった。

きゅうり農家の一日

朝日が昇る前に、

きゅうり農家の田中さんはすでに起きていた。

田中さんは、畑に出て、きゅうりの様子をチェックする。

きゅうりは、朝晩の涼しい時間帯に成長するため、

田中さんは早起きして水やりや雑草取りを行う。

 

奥さんは、朝食の準備。

朝食は、ご飯、味噌汁、焼き魚、漬物など、シンプルな和食。

食卓には、昨日収穫したばかりの新鮮なきゅうりも並んでいる。

 

「いただきまーす!」

子どもたちの元気な声が聞こえてくる。

 

田中さんは、学校へ行く子供たちを見送り、

再び畑仕事に取り掛かる。

 

午前中は、きゅうりの収穫や枝切りを行う。

きゅうりは、成長が早いので、毎日収穫する。

また、枝切りを行うことで、

風通しを良くし、病害虫の発生を防ぐ。

 

田中さんは、慣れた手つきで、きゅうりを収穫して

収穫したきゅうりは、大きさや形によって、選別される。

選別されたきゅうりは、段ボール箱に入れられ、

午後には、出荷作業に入る。

 

出荷作業が終わると、畑の整備を行う。

土を耕したり、肥料を撒いたりすることで、

次のきゅうり栽培の準備をする。

 

日が暮れる頃、田中さんは、ようやく一日の仕事を終える。

田中さんは、家に帰ると、家族と夕食を囲む。

その食卓には、きゅうりの料理がいくつか並ぶ。

 

「おいしい!」

子どもたちの明るい声が聞こえてくる。

 

きゅうり農家の田中さん一家の一日は過ぎていく。

彼らは、毎日、きゅうりの栽培に精一杯努力し、

家族で協力しながら、生活をしている。

 

次の日

 

(今年もこの時期がやって来たか。)

 

田中さんはそう感じながら

取れたてのきゅうりに串を刺し、氷で冷やす。

 

子どもたちの帰宅を楽しみに待ちながら。

お香の香りに誘われて

雨上がりの静寂を破るように、

ほのかにお香の香りが漂ってきた。

思わず鼻をくすぐられ、

その香りに導かれるように古民家の中に入った。

 

土間の土の香りと、

木造の梁や柱が醸し出す温もりある空間。

窓からは緑豊かな庭が見え、

心が洗われるような景色が広がっている。

 

「いらっしゃいませ。さあどうぞ。」

奥の座敷に腰掛けると、湯気の立ち込める急須と、

色鮮やかな和菓子が用意された。

 

「ようこそいらっしゃいました。

お香の香りが届いたようですね。」

 

老人の言葉に、思わず顔を赤らめる。

恥ずかしさを隠すように、お香について尋ねてみる。

 

「お香は、古くから人々の心を癒すために使われてきたものです。

様々な香りには、それぞれ異なる効果があります。」

 

ラベンダーは心を落ち着かせ、

ローズマリーは集中力を高め、

柑橘系の香りは気分をリフレッシュさせる

効果があるという。

 

話を聞きながら、老人が勧めてくれたお香を焚いてみる。

すると、たちまち部屋中に心地よい香りが広がり、

心がスーッと軽くなるような感覚に包まれた。

 

老人は、お香の焚き方や選び方についても

丁寧に教えてくれた。

その知識の深さに、思わず感嘆の声を漏らしてしまう。

 

気が付くと、お香の香りと、老人の柔らかい表情に包まれて、

いつの間にか忘れていた安らぎを取り戻していた。

そしてきっと、この老人は

四季折々の自然と共存しながら、

心豊かに暮らしてきたのだろう。

 

日暮れとともに、私は帰ることにした。

老人は私に丁寧に挨拶し、見送ってくれた。

 

古民家を出て、私は振り返って見た。

夕暮れの光に照らされた古民家は、

さらに美しく輝いていた。

 

私はお香の香りに誘われて、本当に良かった。

そう思った。

おじいちゃんの店

小さな商店を営む実家。

俺はおじいちゃんの作る五平餅の香ばしい匂いに包まれて育った。

店の奥にある囲炉裏端で、炭火でじっくり焼かれる餅に、

甘辛いタレが絡み、「ジュッ」と音を立てる。

 

学生のお客がやって来た。

「おじいちゃん!一本お願いします。」

「おっ。大きくなったなぁ。いくつになった?」

「中2です!」

「ほお。もう中学生かぁ。あんな小っちゃかったのになぁ。」

ハハハ。と言葉を交わす。

 

俺は成長するにつれ、おじいちゃんの作る五平餅は、

地元の人々にとってなくてはならない存在なんだ。

と気付かされる。

素朴な味わいと、温かい笑顔で接するおじいちゃんは、

多くの人から愛されていた。

 

しかし、ある日、おじいちゃんが体調を崩した。

「おじいちゃん。もう店には立てないみたい。」

 

「おじいちゃん!嘘だよね?大丈夫だよね?」

「ははは。おじいちゃんは大丈夫だ。」

「ダメよ!お医者さんに無理するなって言われたでしょう。」

 

俺は家族に必死に説得を試みるが・・・

「ダメよ。おじいちゃんはもう長時間立っていられないんだから。」

「休ませてあげて。」

店は閉店することに決まった。

 

店を閉める日、

俺はおじいちゃんに最後のお願いをした。

「五平餅の作り方を教えて。」

おじいちゃんは優しい笑顔で、

「よし!やるか。」と、

ひとつひとつ丁寧に教えてくれた。

 

そんな、おじいちゃんの姿に、俺は決意する。

 

「おじいちゃん。俺、おじいちゃんの五平餅を作りたい。」

「この店を守っていきたいんだ。」

 

それから俺は、店を継ぎ、五平餅を作り始めた。

しかし、思うようにいかず、何度も失敗を繰り返した。

それでも俺は諦めない。

必死に、おじいちゃんの教えを思い出す。

 

「一本ください。」

 

「はい。どうぞ。ありがとうございました。」

 

「ここの味は変わらないですね。」

 

「大好きなんです。頑張ってください。」

 

俺にとっての最高の言葉だった。

 

おじいちゃんの温かい愛情と、情熱を込めた五平餅を

俺は今日も焼き続ける。

私の挑戦

 

42.195キロ。

長い、長い道のり。

初めてのフルマラソンに挑む私は、

スタートラインに立ち尽くしていた。

 

周りのランナーたちは皆、

自信に満ち溢れているように見える。

私は、不安でいっぱいだった。

 

ランニングを始めたのは、1年前のことだった。

運動不足解消のために始めた軽い気持ちだったが、

いつの間にかマラソンの魅力に取り憑かれていた。

そして、ついに念願のフルマラソン出場を果たした。

 

しかし、いざスタートラインに立つと、

私は圧倒されてしまった。

周りのランナーたちの速さ、熱気、

そして何よりも、42.195キロという果てしない距離。

「自分が本当に完走できるのだろうか」

不安で押しつぶされそうだった。

 

それでも、私は一歩踏み出した。

最初の数キロは、ゆっくりと自分のペースで走った。

周りのランナーたちにどんどん追い抜かれながらも、

私は諦めなかった。

 

10キロ地点を過ぎた頃だろうか。

私は最初の壁にぶつかった。

足が重くなり、息が上がってきた。

「もうダメかもしれない」

そう思った時だった。

「がんばれ!」「がんばれ!!」

沿道から声援が聞こえる。

私はその言葉に励まされる。

「諦めない!」

私は一歩ずつ前に進んだ。

 

20キロ地点を過ぎると、

私の足は棒のように重くなっていた。

それでも、私は諦めなかった。

「がんばれ!」という声援が私にチカラをくれる。

 

私は、ゴールテープが近づいていることを信じて、

走り続けた。

 

そしてついに、フィニッシュライン。

私は、よろよろと倒れ込みながら、

ゴールテープを切った。

5時間03分というタイムで、

私は初めてのフルマラソンを完走した。

 

ゴール後、私は達成感と感動で涙を流した。

42.195キロという長い道のりを

自分の力で走りきった。

私は、自分が思っていたよりも

ずっと強い人間だったのかもしれない。

 

初めてのフルマラソンは、

私にとってかけがえのない経験となった。

この経験を通して、私は自信と勇気を手に入れた。

そして、これからも何事にも諦めずに

挑戦していくことを決意した。

 

私は、これからも走り続ける。

そして、いつか自分の限界を超えて、

さらなる高みを目指そう。

 

私の挑戦はまだまだ続く。