popoのブログ

超短編(ショートショート)

湯上りの牛乳瓶

仄暗い脱衣場の明かりの下、

若者はタオルで髪を拭いながら鏡に映る自分を見た。

少し紅潮した顔には、どこか満足げな笑みが浮かんでいる。

熱い湯船から出たばかりの体には、まだ湯気が立ち上る。

彼は洗面台に向かい、冷水を顔に浴びた。

ひんやりとした感触が心地よく、熱くなった頭をクリアにしてくれる。

そして、冷蔵庫から取り出した牛乳瓶を手にした。

懐かしいガラス瓶の重みに、子供の頃を思い出した。

彼は、コップに牛乳を注ぐことなく、

そのまま瓶の口を唇に当てて飲み始めた。

冷たい牛乳が喉を潤し、体中に広がっていく。

牛乳の濃厚な風味と、ほんのりとした甘みが、

疲れた体を癒してくれる。

窓の外には、街の灯りがぼんやりと輝いている。

静かな夜空には、無数の星が瞬いていた。

彼は牛乳瓶をゆっくりとテーブルに置き、窓の外の景色を眺めた。

この習慣は、子供の頃から続いている。

風呂上がりに牛乳を飲むのは、彼にとって一種の儀式のようなものだった。

熱い湯に体を預け、心身をリフレッシュさせた後、冷たい牛乳を飲む。

そのコントラストが、彼を心地よい気分にさせてくれる。

彼は、深呼吸をして、牛乳瓶をゆっくりとテーブルの上に置いた。

そして、再び鏡に映る自分を見た。

鏡の中の若者は、少し大人になったように見えた。

牛乳を飲み終えると、彼は再びタオルで体を拭き、部屋に戻った。

ベッドに横になり、天井を見上げながら、

今日あったことをゆっくりと思い出す。

牛乳を飲みながら感じるのは、どこか懐かしい温もりだ。

子供の頃、祖母の家で飲んだ牛乳の味、

父親と一緒にお風呂に入った時の記憶。

それらの断片が、彼の心に広がっていく。

彼は、この瞬間が永遠に続けばいいと思った。

しかし、そんなことはできない。

時間は刻々と流れ、彼は大人になっていく。

それでも、この習慣だけは、これからもずっと続けていきたい。

明日の朝、また同じように牛乳を飲もう。

そう心に決め、彼は静かに眠りについた