緑豊かな山々に囲まれたカブトムシの村。
今年も夏の訪れとともに、
カブトムシたちの活気あふれる季節がやってきた。
村のはずれにある大きなクヌギの木の下には、
カブトムシたちの憩いの場となる広場がある。
力自慢のオスたちが自慢の角比べをしたり、
子どもたちは木の実を拾って遊んだり、
いつも賑やかな声が響き渡っていた。
そんなある日、広場にいつもとは違う
小さなカブトムシが現れた。
その名はミノ。
他のカブトムシたちよりも体が小さく、
ちょっぴり臆病な性格だった。
ミノは村の他のカブトムシたちと
一緒に遊ぶのが大好きだったが、
いつも大きな体で押しのけられてしまい、
なかなか輪に入れずにいた。
ある日、村では年に一度の大きなお祭りである
「カブトムシ祭り」が開催されることになった。
カブトムシたちは、自慢の角で相手を押し倒し、
土俵から落とした方が勝ちという「角力大会」や、
カブトムシの背中に子どもたちが乗って競争する
「カブトムシレース」など、様々な競技で盛り上がっていた。
ミノも、お祭りに参加してみたいと心から願っていた。
しかし、他のカブトムシたちよりも体が小さく、
角力大会ではすぐに負けてしまうのは目に見えていた。
それでも、どうしても諦められなかったミノは、ある決意をする。
ミノは得意の工作を生かして、
小さなカブトムシでも勝てるような秘密兵器を考えた。
それは、ミノ自身の背中に小さな風車をつけること。
風車の力を利用して軽快に進めば、
カブトムシレースで優勝できるかもしれない。
ミノは夜通し作業を続け、
ついに風車を自身の背中に装着した。
カブトムシレースの日。
ミノが登場するとみんなは笑った。
「あいつ何か背中に刺さってるぞ!」
「扇風機の代わりでもしてくれるのか?」
ハハハハハ。と笑い声が会場に鳴り響く。
そして、いよいよレースは始まった。
最初は、大きなカブトムシたちに押されて不利な状況。
「邪魔だ!」「どけっ!」とはじかれる。
遅れを取ってミノだったが、
「負けない!」「勝って友達を作るんだ!」と
強い想いを抱いた時、突風が吹く。
ミノは風車の力を利用して軽快に追い上げた。
ゴールまであと少し!
ミノは小さな体を活かして、
前を行くカブトムシたちの間をすり抜ける。
そして、ついに一番でゴールテープを切った。
会場からは、ミノの大逆転勝利に大きな拍手が送られた。
小さな体でも諦めず、勝利したミノ。
その勇姿は、お祭り一番の盛り上がりを見せた。
「さっきはバカにして悪かった。」
「お前、すごいな。友達になってくれないか?」
臆病だった性格も克服して、多くの友達ができたミノ。
今では・・・
村の小さなカブトムシたちに、
考えるチカラと努力の大切さ、
諦めないという強い想いを、伝えている。