popoのブログ

超短編(ショートショート)

セレンディピティ

古都の路地裏を散策していたあなたは、

ひっそりと佇む小さな雑貨屋にふと足を踏み入れます。

 

埃をかぶった棚の一番奥に、

そのぬいぐるみはちょこんと座っていました。

 

古びたクマのぬいぐるみ、片方の目が少し取れかかっていますが、

どこか懐かしい、温かい目をしています。

 

見つめていると、まるで「連れて帰って」と囁いているようでした。

 

あなたは居ても立っても居られない気持ちになり、

一緒に帰ることを決断しました。

 

お家に帰り、クマのぬいぐるみを綺麗に拭いてあげると、

部屋の空気が変わったように感じました。

 

そしてすぐさま、取れかかった片方の目を縫ってあげます。

「よし。もう大丈夫だよ。」

縫い終わったクマのぬいぐるみを抱えると、

部屋が急に明るくなったように感じます。

 

「これからは一緒だよ。さみしくないよ。」

 

あなたはぬいぐるみに「ルナ」と名を付け

一緒にベッドで眠ります。

 

「ルナ」月の明かりがあなたを幸せにしますように。

 

目を覚ますと、不思議なことが起こり始めます。

落としてなくしたと思っていた大切なイヤリングが

ルナの足元から見つかったり、

いつもは混んでいるバスにスムーズに乗ることができたり、

友達との問題も、ふとしたことで解決したり、

帰り道、見上げた夜空には、流れ星が輝いたのです。

 

最初は偶然だと思っていたあなたでしたが、

幸運は日に日に増していくように感じました。

 

そしてある日、あなたは気づいたのです。

幸運が起こるたびに、

ルナの瞳が、嬉しそうに輝いていることに。

 

「ねえ、もしかして、あなたが幸運を運んできてくれているの?」

 

今日もあなたはルナを優しく抱きしめて眠ります。

夢の中ではルナが話しかけてきます。

 

「ありがとう。あなたに出会えて幸せだよ。」