popoのブログ

超短編(ショートショート)

いつもの場所で

はじめて会った時彼女はまだ幼かった。

真ん丸な目でボクを見つめていた。

5分か10分か、その場に立ちくつしてずっとボクを見ていた。

しばらくして彼女がいなくなったと思ったら

戻ってきボクを抱えてくれた。

そこからボクと彼女との付き合いが始まった。

時に一緒に寝て、時にあたられ、時に無視され

それでも最後はぎゅっと抱きしめてくれた。

温かかった。

ある日、彼女は帰ってくると泣いていた。

ボクには何もできない。

ただただ優しく見守るだけ。

それでも頑張れって思っていたよ。

それでも踏ん張れって思っていたよ。

何日も苦しんでる日もあったね。

それでも笑顔が戻った時はとてもうれしかったよ。

今は彼女と離れ離れ。

それでもボクは忘れないよ。

とてもかわいい笑顔でボクを抱いてくれた日のこと。

とてもかわいい笑顔でボクを撫でてくれた日のこと。

ボクを必要としなくなったことは喜ばしいことだよね。

ボクを必要としなくなったことは大人になった証拠だね。

それでもまた辛い時はここに戻ってきて。

ボクはいつでも寄り添ってあげる。

でももう本当に必要ないのかな。ってたまに思うよ。

それはそれでなんか寂しいな。

ボクには同じような寿命はないから。

元気かな?また苦しんでいないかな?

ボクは自分から動くことができないから。

それでも、あなたの幸せを願っていることがボクの幸せだよ。

ボクを大切にしてくれたのを覚えているから。

いつかまたこのお部屋に戻ってきてくれたら、また遊んでね。

今日もボクは彼女のタンスの上で待っている。

「ぬいぐるみ」ってみんなは言うけど

彼女はボクに名前を付けてくれたんだよ。

それだけでもすごく幸せなんだ。