チャイムが鳴り
お昼の時間がやってくる。
色とりどりのお弁当の中
俺はランドセルから
そっと、おにぎりを取り出す。
「おかずないの?」
「なにかあげようか?」
頼むからそんな風に言わないでくれ。
俺の家は、別に金持ちじゃないが
普通の家庭だ。
かあちゃんも、とうちゃんも、朝が早いだけだ。
「べつに。」
「ありがとう。大丈夫。」
俺に恥じらいなどない。
ちなみに言っておくが
俺は、かあちゃんのおにぎりが大好きだ。
今日はどんな具が入っているかな?
このかぶりつく瞬間が、俺の楽しみだ。
大人になった俺は
今日も会社でおにぎりを食べる。
愛する妻が嫌がらせかと
毎日、具で遊んでやがる。
(おい!今日はネギかよ!)
「お前の奥さん変わりもんだなあ。」
「でも優しいなあ。うらやましいよ。」
同じ、おにぎりだが今はちょっと自慢だ。