popoのブログ

超短編(ショートショート)

勇気ある一手

若き才能、沢田は今30分の時間をかけ次の一手を考えている。

沢田はこの対局で予想だにしない局面に立たされていた。

対戦相手は将棋の天才と謳われた望月。

圧倒的な実力を持つ望月の前では、沢田の手もまるで読まれているようだった。

何度も悔しい思いを味わいながら、沢田は一手一手を進めた。

そして形勢不利な状況に立たされていた。

 

観客席に息をのむような静寂が広がり、

将棋盤の上で戦う二人の間には緊張感が漂っていた。

沢田は長考し、頭を抱えていた。

「こりゃきついなあ。」

観客からは沢田が敗戦する。そういう声が聞こえ始めた。

しかし、そこで彼はふと、将棋の真髄を振り返った。

 

「一手で形勢は変わる。でもそれは、未知の領域に踏み込む勇気が必要だ。」

 

沢田は深呼吸をして、次の一手に賭けることを決断した。

その手は駒を動かすだけでなく、彼の勇気と信念が込められていた。

次の瞬間、望月は驚きと緊張の表情を浮かべ、局面が一変する可能性に戸惑った。

 

観客もまた、沢田がその一手を打った瞬間、雰囲気が一変した。

観客たちは沢田の勇気に感動し、どよめきを上げた。

将棋の駆け引きの中で生まれた沢田の一手が、人々の心に強く響いたのだ。

 

その後も試合は激しい攻防を繰り広げながら進み、

「参りました。」

最終的には沢田が見事な逆転勝利を収めたのだった。

 

沢田は対局後にこう語った。

「本当に厳しい一局でした。何度敗けを覚悟したことか。

それでも、諦めるな。と師匠に言われた言葉を思い出し、

忘れかけていた勇気を出すことが出来ました。」

 

また敗れた望月はこう語った。

「大切なのは勇気を持つことだと感じました。

悩んで悩んで、失敗することもあります。

後悔することもあります。

それでも逃げた自分より、進んだ自分は成長します。

勝ちへ導く一手も、間違えてしまった負けの一手も。

私は今日、大切な場面で勇気ある一手を打てなかった。

まずは進んだ彼を誇りに思う。」