popoのブログ

超短編(ショートショート)

母の手がのびる

「ご飯が少し冷めたらこれ混ぜてね」

その言葉と共に、私の前に用意された調味料。

酢、砂糖、塩、ごま油。

さあ私の楽しみはこれから。

しっかり混ぜたら、私は海苔を敷き薄くご飯を広げる。

「しっかり混ぜたの?」

「大丈夫だよ。」

私は笑顔で次の作業に入る。

「さあ今日はどうしようかなあ。」

海苔の端に、具材を置く。

好きな具材を好きな配置に置く。

私はずっとワクワクしっぱなし。

初めて作ったのは、母の手伝いで小学校の頃だった。

「やってみる?」

私が興味をもって隣に立っていたら、母が言った。

私は母が作るキンパが大好きだった。

私が成長するにつれ、具材も増え、バリエーションが増えた。

次第に私は、キンパを作ることが楽しみになった。

家庭の味。家庭の料理。というものがあるとすれば、

私は間違いなく「キンパ」だ。

さあ。いよいよ包丁を入れる瞬間がきた。

私のボルテージも最高潮。

何度作っても、この瞬間はちょっとドキドキする。

「どう?」

そう言ってのぞき込む母。

そして母の手がのびる。

「ああっ!」「もう。」

母は頬をほお張らせながら、私を見て笑顔で親指を立てた。

「あたり前じゃん!私が作ったんだから。」

と、ちょっと誇らしげなわたし。