popoのブログ

超短編(ショートショート)

小さな温泉町

ここは小さな温泉町。

良質な鉱泉水と華麗な遊女が

町中を賑わせる。

まさに「夢のまち」「癒しのまち」

の…はずだった。

 

しかしその活気は長く続かない。

 

この町には鉄道がなく、

徐々に客足は遠のいていった。

「またあそこも潰れたね。」

「もうダメかもしれない。」

そんな言葉が聞こえ始める。

 

「ここには温泉があるんだぞ」

 

復活をと、もう一度奮起した気持ち

 

ザァーザァー

 

その気持ちを嘲笑うかのような大雨。

そして川の氾濫。

浴場は崩壊する。

 

「もうダメだ。」と

多くの人が涙した。

 

「諦めよう。この町はもう・・・」

 

その時だった。

 

「何をみんな落ち込んでいる!?」

 

「この町には素晴らしい温泉が

まだあるじゃないか!」

「多くの人に知ってもらいたくないのか?」

 

しかし、落胆した町の人には届かぬ言葉。

 

「正直になろう。」

 

「これで諦められるのか?」

「ここで終わっていいのか?」

 

「そうじゃないだろう?」

 

少しずつ…少しずつ…心が揺れる。

 

「それなら頑張ろう!」

 

「何度だって頑張ろう!」

 

「何回だって立ち上がろう!」

 

「大丈夫。必ずうまくいく。」

 

そしてついに、町の人たちは立ち上がった。

 

「もう一度、新しい温泉町を作ろう!」

 

「プールなんてどうだろう?」

 

「それならいっそ、遊園地を作ってみては?」

 

「合唱団も結成しよう!」

 

「それなら劇場も必要だ!」

 

この町は、腐っていなかった。

ひとりひとりの強い想いが

新たな町を築いていく。

 

そしてそれから数年後、

この町は新しい温泉町となって

生まれ変わった。

 

「わざわざ行きたい温泉町」

 

幾度の困難と危機を乗り越えて。

それは間違いなく、

ひとりひとりの熱い想いの賜物だった。

 

新しい温泉町では

よく耳にする言葉がある。

 

それは…

 

「成す人と成さぬ人の差は

どれほど本気で願望をもっているかだ」と。