popoのブログ

超短編(ショートショート)

2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧

笑顔の魔法

ミユキは病気で入院しているおばあさんを、 毎日お見舞いに訪れていました。 おばあさんはいつも寂しそうで、 なかなか笑顔を見せてくれません。 ミユキはおばあさんを元気づけようと、 好きな歌を歌ったり、昔話を聞かせたりと、 できる限りのことをしまし…

大行進

朝焼けの光が、東京の空を淡い紫色に染めていく。 テスは、その光を浴びながらベッドから静かに抜け出した。 今日は、待ちに待った日。歴史が変わるかもしれない日だ。 「テス、もう起きたのかい?」 隣の布団から、妹のメアリが目を覚ました。 彼女の問いに…

男はつらいよ”青春”

夕暮れ時、古い商店街の一角にある古本屋。 店主は、25歳になっても夢を追い続ける優吾。 大学時代に書いた小説が新人賞の最終選考に残ったことで、 自分には文学の才能があると信じて疑わなかった。 しかし、その後は鳴かず飛ばず。 投稿した作品はことごと…

最後のピース

何日も、何週間も、 ただただジグソーパズルと向き合う日々。 あなたは、いつ終わるとも知れないその果てしない作業に、 少しうんざりしながらも、やめることはなかった。 まるで、日々の忙しさに追われる、あなたの毎日のようだった。 バラバラだったピース…

愛酒

月光が静かに降り注ぐ夜、 一人の老人が縁側に座り、月見酒を傾けていた。 名は千代蔵。かつては都で名を馳せた歌人だったが、 今は筆を置き、ただひたすらに酒を愛する日々を送っている。 「ふう……」 千代蔵は盃に映る月を眺めながら、静かに息を吐いた。 …

生まれながらの将軍

それは、嵐のように激しい日だった。 長きにわたる戦乱がようやく終わり、 天下はかろうじて一つの名のもとに集まろうとしていた。 しかし、集まったのは互いに血で血を洗う戦いを繰り広げた者たち。 互いに深く刻まれた憎悪の傷は、そう簡単に癒えるもので…

町の輝き

はるか昔から、お城の天守閣には2匹の金のシャチがいました。 太陽の光を浴びて金色に輝くのが金さん、 月の光を浴びて銀色に輝くのが銀さんです。 2匹はいつも寄り添い、 町と、そこに暮らす人々を静かに見守っていました。 彼らは、ただの飾りではありま…

緊急会議!

ここは人間の血管の中。 赤血球、白血球、血小板、そしてリンパ球が 緊急の会議を開いています。 赤血球(アッキー):みんな、今日は緊急の集まりだよ!この体、最近ちょっと不摂生気味じゃないか?朝食は抜きがちだし、夜は遅くまで起きてるし…。 白血球(…

禁門の変

舞台は、現代の京都。 世界を魅了する伝統と最新テクノロジーが融合した、超クールな都市。 この街を陰で動かしているのは、二つの巨大な秘密組織。 チーム「長州」:コードネーム「尊攘(そんじょう)」。 彼らは、「古いしきたりはもう古い! 天皇のスピリ…

スタンドから

あの夏の暑さは、今でも鮮明に思い出せる。 僕たちは、スタンドでただ声を枯らすことしかできない応援団だった。 でも、僕たちの声は、グラウンドにいる選手たちにとって、 きっと風となって背中を押す力になると信じていた。 決勝戦、相手は負け知らずの強…

畑のパイナップル

穏やかな日差しが降り注ぐ南国の島で、 ハリーは今日もパイナップル畑に立っていた。 ここは、祖父から受け継いだ大切な土地。 一面に広がる青々とした葉は、 まるで生きているかのように風に揺れ、 太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。 風が吹くたびに…

親に会いに行こう

ある晴れた日、僕は久々に 実家に帰ろうと、新幹線に飛び乗った。 車窓から流れる景色は、僕の記憶の中にある故郷の風景とは少し違って見えた。 東京に出てきてから10年。 僕はすっかり都会の喧騒に慣れ、親と話すのは 年に数回の電話と、正月に帰省する時だ…

さようなら。こんにちは。

「さよなら」は、いつも突然にやってくる。 僕の名前はマーク。 真っ白なボディは誇りだった。 たくさんの思い出を乗せて、家族を乗せて、 いろんな場所へ旅をした。 初めて買った車だから、ピカピカに磨いてくれたっけ。 新しい道も、雨の日も、雪の日も、…

スポーツ実況

「今、最後の笛が鳴り響きました!信じられない、信じられない結末です!スタジアム全体が歓喜の渦に包まれています!我々の見つめるこの光景は、歴史の一ページに刻まれるでしょう!」 実況席からマイクを通して、私の声が震えていた。 興奮と感動が入り混…

さざれ石

これは、遠い遠い昔から、そして、 これからも続く、小さな石たちの物語です。 物語の主人公は、名もないさざれ石。 彼は、川底で静かに時を過ごす、ごく普通の石ころでした。 周りには、彼と同じように小さな石たちがたくさんいました。 彼らは互いにぶつか…

ライオンの王

昔々、広大なサバンナの奥深く、 ライオンの群れを率いる勇敢なレオという名の王がいました。 彼の群れは平和に満ち、レオはその強さと知恵で皆から慕われていました。 しかし、彼の心にはいつも、群れとは違う、何か特別な存在への憧れがありました。 ある…

ハンバーグと、あの日の約束

「ああ、お腹すいたなぁ」 そう呟きながら、俺は古いアルバムをめくっていた。 ページを捲るたび、色褪せた写真の中に幼い頃の自分が現れる。 その隣には、いつも無邪気な笑顔の祖母がいた。 祖母の得意料理は、なんといってもハンバーグだった。 肉をこねる…

お父さん。

お父さんの背中 夕暮れの部屋に、オレンジ色の光が差し込んでいる。 私は窓の外をぼんやりと眺めていた。 もうすぐ、お父さんが帰ってくる時間だ。 「ただいま」 玄関のドアが開く音がして、お父さんの声が聞こえた。 私は慌てて玄関に向かう。 「おかえり、…

花たち

雨上がりの庭、水滴をきらめかせる花々が、 楽しそうに話し始めました。 「ああ、なんて気持ちがいいんでしょう!」 そう言ったのは、一輪のバラでした。 彼女は水滴をまとった花びらを優雅に揺らしています。 「本当に。雨上がりの空気は、しっとりとしてい…

黒い雨

土砂降りの雨だった。 しかし、それはどこか違っていた。 鉛のような重さで空から落ちてくるそれは、 灰色ではなく、不気味なほどに黒かった。 まるで世界中の闇をかき集めたかのようなその雨は、 地表に打ち付けられ、水たまりさえも深い黒に染めていった。…

心温まるタクシー

深夜、僕は疲労困憊でタクシーに乗り込んだ。 今日一日の仕事の失敗が頭の中をぐるぐると回り、 重苦しい空気が僕を包み込んでいた。 目的地を告げると、タクシーは静かに走り出した。 車内には、落ち着いたジャズの音楽がかすかに流れている。 運転手さんは…

闇夜のタクシー

漆黒の闇夜に、雨が降りしきる。 終電を逃した私は、ずぶ濡れのまま大通りに立ち尽くしていた。 こんな夜にタクシーなど捕まるはずがない、そう諦めかけたその時、 一台のタクシーが吸い込まれるように目の前に現れた。 幸運に胸をなでおろし、後部座席のド…

今日を生きる

目を覚ますたびに、彼は、 昨日とは違う自分になれると信じている。 午前5時、まだ世界が静寂に包まれている時間。 スマートフォンのアラームを止め、彼はベッドから飛び起きる。 その動作に迷いはない。今日という新しい一日が始まる合図だ。 カーテンを開…

蜜の旅

小さなハチの子、ポポは、 今日が初めての蜜の旅の日。 巣の入り口から顔を出すと、 目の前には見たこともない広大な世界が広がっていました。 色とりどりの花が咲き乱れる草原、どこまでも続く青い空、 そしてポポの体を優しく包む太陽の光。 ポポは、その…

どーん!

「大丈夫、きっとうまくいくよ」 そう誰かに言ってほしかった。 何をやってもうまくいかない。 何を見ても虚しい。そんな毎日だった。 大好きだった彼女に振られ、心にポッカリと穴が空いてしまった。 食事も喉を通らず、眠れない夜が続き、 気づけば鏡に映…