外を走っていると突然大雨が降りだした。
オレはがむしゃらに走る。
「くそ!」「なんでだよ」心の中で叫びながら
オレの中である記憶がよみがえる。
あいつはオレの幼なじみ。
昔から勉強もできてスポーツもできて、あいつはモテた。
でもあいつは何気ない顔をして「一緒に遊ぼう」と何の取り柄もないオレの家を訪れる。
くだらないゲームをしてはバカみたいに笑った。
オレが唯一あいつと張り合えるのはゲームだけだった。
くだらないTVをみてはバカみたいに笑った。
オレもあいつもお笑いが大好きだった。
時には近くのコンビニにどっちが先に着くかなんて勝負をしたな。
野球やサッカーやバスケで一緒に遊んで一緒に競った。
でもいつもあいつが先にいた。でもいつもあいつが勝っていた。
あいつはカッコよくて気が付けばオレの憧れになっていた。
「一緒に高校行こうぜ!」ある日あいつに誘われた。
一緒にいると自分は頑張れると思った。一緒にいるのが楽しい自分がいた。
嬉しい言葉だった。
頑張ろう。あいつに追いつこうと勉強した。必死に必死に頑張った。
そしてあいつの行きたかった学校にオレも合格した。
「また一緒に通えるな」あいつはこう言いて二人で喜んだ。
あいつの心境はわからないがオレの胸は張り裂けそうなほど高鳴っていた。
嬉しくて。嬉しくて。何度もガッツポーズをした。
それからしばらくして卒業式を迎える。
卒業の日、あいつはいなかった。
高校に入ってできた新しい友達。新しい仲間。
真面目にやっていた部活も辞めて、あいつはいなくなった。
悔しいとかムカつきとかじゃなく、
オレは目標を失ったかのように心にぽっかり穴があいた。
「くそ!」「なんでだよ」
はあ。はあ。膝に手をあて息をつく。
気が付くと雨はすっかり止んでいた。