popoのブログ

超短編(ショートショート)

わたしの夢

私の父親はPTSDを患い

感情のコントロールが出来ずにいた。

その為に私は何度か暴力をふるわれた。

 

私の母親はかつて教師を目指し

ピアノを演奏するのが好きだった。

 

私は聞く、話す、読む、書く。

が苦手だった。

その為か、クラスメイトのみならず

先生までもが私に罵声を浴びせた。

その頃のあだ名は「バカなスージーだ。」

 

そんな私の楽しみは

姉妹で母のピアノに合わせて歌うこと。

「いつかママのピアノで

 みんなの前で歌うんだ!」

 

私は大人になっても

コミュニケーションをとるのが苦手だった。

それでも、食堂で働きながら

バイトをしながら、懸命に頑張った。

「いつかママのピアノで

 みんなの前で歌うんだ!」

 

しかし、その夢は叶わずママを亡くした。

 

「あなたの歌声はいつも素敵よ。」

ママが言い残した言葉だ。

私はその言葉がきっかけで

オーディション番組に出る決心をした。

それは私が47歳の年だった。

 

舞台に立つと、クスッと笑い声が聞こえる。

どこにでもいる平凡なおばさん。

ぽっちゃりとした、ボサボサ頭のおばさん。

そう。それがわたし。

 

「夢はあるのかい?」

「プロの歌手になることです。」

次の瞬間、会場には大きな笑いが起きた。

「そうか。いい夢だね。ところで

今日はなにを歌ってくれるんだい?」

私はゆっくり深呼吸をする。

「聞いてください。タイトルは・・・」

 

『夢やぶれて』

 

 

そして私は、その歌がきっかけになり

歌手になった。