村に住む健太は貧しい農家に生まれた。
毎日の楽しみは、美味しいごはんを食べること。
そして、健太はその幸せに感謝をしていた。
その日、健太は早朝から珍しく台所に立ち、
一つ一つ丁寧に形を整え、
心を込めて団子を16個作った。
次に健太は、作った団子を運び始めた。
玄関を出て、村の外れに向かう。
ボロボロのつっかけを履いて、
どんどんと奥地に向かう。
つっかけは、泥まみれになっていた。
「よし！着いた！」
そこは、誰も足を踏み入れないであろう
奥深い田んぼ。
周りは、静寂に包まれている。
そしてどこか、神秘的な雰囲気が漂っていた。
健太は、一列に団子を並べる。
そして、静かに手を合わせた。
「田んぼの神様、今年もたくさん、ありがとう。
来年も、よろしくお願いします。」
すると、次の瞬間、驚くことに、
団子から淡い光が溢れ出した。
それは太陽の光が、白くつるつるとした
健太の団子を照らした様だった。
「うわぁ。」
健太の口から思わず声がこぼれる。
するとどこからか、蝶々が一頭。また一頭。と
次々に飛んできた。
蝶々たちは、田んぼの上を優雅に舞うと、
健太の周りを囲み始めた。
「ありがとう」
えっ！？
健太は耳を疑った。
周りを見渡すが誰もいない。
「ねぇ！みんな！まさかみんなが言ったの！？」
健太は蝶々たち話しかけるが、
蝶々たちは田んぼに戻り、優雅に舞うばかり。
そしてしばらくして、蝶々たちは去っていった。
言葉を失って呆然と立ち尽くす健太。
「ママ！パパ！」
家に戻った健太は、自分が見た光景、
自分が聞いた言葉を話した。
「そうか、そんなことがあったのか。」
「健太。それはね。きっと、神様からの祝福よ。」
健太自身が心に思っていた素直な想い。
「ありがとう」
もしかしたら、それは健太の心の声だったのかもしれない。
