「たこ焼き」「じゃがバター」「りんご飴」立ち並ぶ屋台。
「恋人」「家族」「友達」行き交う人たち。
普段は静かなこの場所も、今日は一際にぎやかだ。
日は落ちても蒸し暑さはなくならない。
額から流れる汗。団扇やハンディーファンを持つ人たち。
そして何より、みんなの楽しそうな声。
俺の店は「ベビーカステラ」だ。
誰かが言ってたが、ベビーカステラには約100年以上の歴史があるんだぜ。
そして祭りの歴史はさらに深い。
何でも昔に太陽の神を招くために騒いでたらしいぜ。
どんなに暗い世の中でも、多くの知恵をもって行動すれば、明るい兆しが見えてくる
というものらしい。明けない夜はないということだ。
ほら。こんな無駄話していたら、あっという間に長蛇の列。
焼きあがったカステラもあっという間になくなる。
でもきっと、焼き上げた数だけ思い出があると思っている。
俺のカステラ食べながら喧嘩するやつ。気付くと結局仲良くなっている。
俺のカステラ食べながらバカみたいに笑うやつ。あっという間になくなっている。
俺のカステラ食べながら泣いてるやつ。兄弟で取り合ってるのか。
そのひと時が、みんなの大切な思い出になるんだろうな。
なんだかんだで俺の目には幸せな光景がたくさん映っている。
「おにいさん!また来ちゃった」
この可愛い子たちは俺のファンにでもなったのか。笑
こういうとこにいると俺でもカッコよく見えるのかもな。
さあもうそろそろ花火が上がる時間だ。
若者たちよ!
いい思い出と青春をたっぷりと味わってくれ。
そしておやじたちは
日頃の疲れも今だけは忘れて、懐かしさに浸ってくれ。
こんな日々がまた来るように
俺は精一杯カステラ焼くぜ!
静まり返った直後に大きな歓声と拍手がこの場所全体を包み込む。