「カンカンカンカン・・・
焼肉焼いても家焼くな♪」
幼い頃この歌ブラウン管から流れると
俺は心が踊っていた。
“拍子木“というものを今の若者は知っているだろうか。
俺は子どもの頃、町内の人たちと夜廻をしていた。
この時間がとても楽しかった。
俺たちは拍子木を手に持ち、
夜風に吹かれながらカチカチと音を鳴らす。
夜の静けさにその音が響き渡る。
魔法のような不思議な音。
暗闇に包まれた町は、
昼間とは違った顔を見せ、
新しい発見がいくつもあった。
まるで冒険に出ているようだった。
今ではうるさいからと、少なくなった拍子木。
それでも俺にとって、拍子木とともに廻った夜道は
友達と一緒に笑いながら、自分たちだけメロディで
不安定ながらも楽しさに満ちた思い出の時間だった。
そして大人の掛け声は「火の用心」
そして子供の掛け声は「焼肉屋いても家焼くな」
笑い声と共に歩く夜道。