popoのブログ

超短編(ショートショート)

ママになる。

抱っこの仕方。げっぷのさせ方。

鼻水のとり方。お風呂の入れ方。何々?ほかにも・・・

覚えることが多すぎて、どれもやらなきゃいけなくて。

次は何?もう大丈夫かなぁ。わたしにできるかなぁ。

でも誰にも言えなくて、言葉に出せずに悩んでる。

それでも日に日に近づいてくる。

嬉しいよ。でもね。でも不安なの。

「元気ですね。」「もう少しの辛抱ですよ。」

早く出たいと言ってるかのように手で足でアピールしてくる。

もうたまらなく愛おしい。

私も必死に頑張るね。

「はい。今日は呼吸の練習ね。」ふっふっひー。頑張らなきゃ。

帰り道。歩きながら涙がこぼれる。・・・もうつらい。

家に帰り夜になると帰宅した夫がお腹をさすり「待ってるね」と。

私も待ってる。でも不安なの。とは言葉にできない。

できたと知って200日とちょっと。

私はこんなにも命を愛おしく思った日はない。尊く思った時はない。

「おめでとう」「頑張ったね」「ありがとう」「おつかれさま」「・・・」

私への言葉なんて記憶にない。

生まれてきた子どもを抱いて見つめるのが精いっぱい。

その日の夜、病室に残った母と私。

母が洗濯物をたたみながらこう言った。

「どれもこれもやらなくていいのよ。全部完璧になんてできっこないの。私も全然できなかった。それでもあなたは立派に育ったわ。できることを。あなたのペースで。」

私は涙でまともに母の顔を見れなかった。

「手が足りなかったらいつでも連絡してきなさい。」そう言って母は病室を後にした。

それから数年。

「今度はいつ来るの?」「この前帰ったばかりでしょ。そのうちね。」笑

私は母に連絡しことはほとんどない。連絡来るのは母のほうから。