「私は学生の頃、何度も親に迷惑を掛けました。
時には学校に呼び出される日もありました。
私は家出もしました。お父さんはその度に私に怒鳴っていましたね。
お母さんは私をどんな時も優しく迎え入れてくれましたね。
そんな両親のおかげで私は大人になれました。
厳しさも優しさも私はそんな両親に教わりました。
今日、私は嫁ぎます。
私の家はとても裕福といえる家庭ではありませんでした。
両親は共に働き、私は鍵っ子という子供でした。
それでも私を大切に育ててくれた二人の想いは忘れません。
私のことを見捨てずに、たくさんの愛情を私に注いでくれてありがとう。
たくさんの大事なことを教えてくれてありがとう。
これからは私だけじゃなくて私たち家族を見守ってくれたら幸せです。」
「お父さん、お母さん。
僕はこんなにもたくさんの愛情をもった彼女と出会えたことが幸せでありません。
僕が初めて挨拶に伺った時、どこか緊張して無口だったお父さん。
そんな緊張を和らげようと、明るくいつも以上に話しかけてくれたお母さん。
あの日のことは一生忘れることがないでしょう。
そしてあの時僕は彼女を幸せにします。と言いました。
その言葉を訂正させてください。
僕は彼女と共に幸せな家庭を築いていきます。
これが僕からのお父さんとお母さんへの誓いです。」
「お父さん…お母さん…」
私は涙が止まりません。
一か月前の今日、突然の電話。
2人の乗った車が事故にあった。
突然失った家族。
それでも私は…私は…
枯れるほどに流し切ったはずの涙を私は今流している。
「お父さん。お母さん。天国から見守っていてね。」
「今、私はとても幸せです。」