popoのブログ

超短編(ショートショート)

忘れられない一打

あの日、ぼくは初めて野球の試合を観に行った。

 

テレビで見るよりも迫力満点のプレーに、

すっかり魅了されてしまった。

 

中でも、一番印象に残っているのが、

松本選手のホームランだ。

 

松本選手は、かつてはチームの主力打者として

活躍していた選手だった。

しかし、ここ最近は

思うように結果が出ていない様子だった。

度重なるケガ、プレッシャーが彼を襲っていた。

 

そんな彼に、周囲はこう言った。

 

「もうダメなんじゃないか?」

「松本の時代は終わった。」

「なんでまた出すんだ。」

 

その日の試合も、松本選手は不調だった。

守備ではエラーをし、打撃でも三振を繰り返し

チームの足を引っ張っていた。

 

スコアは3-4。

9回裏、ツーアウト満塁。

一打同点。または逆転の場面だった。

 

そこで、松本選手は打席に立った。

 

球場は静寂に包まれていた。

 

そして一球目。

松本選手が振るったバット。

 

あっという間の出来事だった。

 

わあぁぁぁ!わあぁぁぁあ!

サヨナラホームラン!」

「松本選手!サヨナラ逆転満塁ホームラン!!」

 

打球はレフトスタンドに入った。

 

観客は総立ちになり、割れんばかりの拍手が送られた。

 

松本選手は、感極まって涙を流していた。

 

ぼくは、その光景を見て、その雰囲気を感じて

鳥肌が立った。

 

そして何より、あの場面で打席に立った彼を

非難する者はいなかった。

 

スタンディングオベーション

誰もがそれが、彼への期待と喜び・・・

その表れそのものだった。

 

非難があったのを感じている。

責任も感じている。

だから…だからどうしても

あそこで一本打ちたかった。

そして、打てたことに喜びと安堵を感じている。

 

これがその時の彼のインタビューだった。

 

ぼくはそれ以来、野球の虜になった。

 

そして、いつか松本選手のような、

人々に感動を与える人になりたいと思うようになった。

 

忘れられない声援

あの日、松本選手が打ったホームランは、

単なる一打ではなかった。

 

それは、苦悩していた選手が

復活への一歩を踏み出した瞬間だった。

 

そして、観客の拍手は、

彼への祝福であり、励ましだった。

 

口ではダメだと言っていても、

彼への期待は変わっていなかった。

 

あの声援は、きっと松本選手の

心の中に永遠に残るだろう。

 

そして、ぼくにとっても、

あの日聞いた声援は、一生忘れることはないだろう。

 

「山田選手!今日のホームランは最高でしたね!」

 

ぼくは今、マイクを持ってインタビューをする。