popoのブログ

超短編(ショートショート)

休暇と自転車

5月の終わり、陽気な風が吹き抜ける季節。

私は仕事に追われ、心身ともに疲れた日々を送る。

「これ頼むね。」の「頼む」。

そう言われると引き受けてしまう。

そんな自分が嫌になる。

 

ある日、私は思い切って休暇届を出した。

予定などはなにもない。

ただ自分自身を休ませたかった。

 

幸いにも何も言われなかったことでホッとした。

 

そして迎えた休み当日。

 

「今日は何も考えずに、ただ自転車に乗ろう。」

 

と、ふと思った。

 

私は近くのレンタルサイクル店で自転車を借り、

街を出発した。

 

最初はゆっくりと街中を走った。

「こんなところに、こんなお店が。」

久しぶりに見る街の景色。

少しずつ変化していた街の景色。

私は心が少し軽くなった。

 

しばらく走ると、郊外に出た。

緑豊かな田園風景が広がる。

鳥のさえずりさえも聞こえてきた。

私は深呼吸をして、自然の香りを吸い込んだ。

心が浄化されているみたいだった。

 

「もうこんな時間。」

気がつくと、何時間も自転車で走っていた。

少し疲れは感じていたが、

それ以上に、心は満たされていた。

 

「今日は本当に来てよかった。」

 

私は小高い丘の頂上で街を眺めていた。

 

帰りの下り坂。

夕焼けの空の美しさに感動しながら

私は笑顔で風を受けている。

 

「ああ。気持ちいい!」

 

街に戻った私は自転車を返却し、家に帰った。

 

その日の夜は、私は何もストレスなく、

いつもよりぐっすり眠れた。

 

そして翌朝、私は仕事へ元気に向かった。

 

「ん~!いい天気!!」

 

「さあ!頑張ろう!」

 

「おはようございます!!」