popoのブログ

超短編(ショートショート)

ウクレレに連れられて

小柄な体躯に、太陽の日焼けした小麦色の肌。

肩には、いつも相棒のウクレレを下げている。

彼女は、海を渡る風のように自由を愛し、

ウクレレの音色を心の友にしていた。

彼女の名前は、ハナ。

生まれた場所も、育った場所も、もう覚えていない。

ただ、ウクレレだけが、彼女をどこまでも連れて行ってくれる、

唯一無二の道しるべだった。

 

小さな島国から、ハナは古い木造船に乗り込んだ。

持っているものは、ウクレレと、数枚の着替えだけ。

どこへ向かうのか、何を見るのか、何も計画はない。

ただ、心に響く音楽を求めて、ただ、新しい風を感じたくて。

 

旅の途中で、ハナは様々な人々と出会った。

スペインの小さな村では、情熱的なフラメンコギターの演奏家とセッションし、

アフリカの砂漠では、星空の下、ドラムのリズムに合わせてウクレレを奏でた。

そして、日本の古都では、静かなお茶屋で、琴の音色と美しい調べを奏でた。

 

人々の心に触れ、様々な文化に触れる中で、

ハナのウクレレの音色は、ますます深みを増していった。

最初は、ただ自分の気持ちを表現するだけの楽器だったウクレレが、

いつしか、人々と心を繋ぐ、かけがえのない存在になっていた。

 

ある日、ハナは、再び大海原へと漕ぎ出した。

今度は、ただ単に旅をするのではなく、

自分の音楽をもっと多くの人々に届けたい、

という気持ちが芽生えていた。

 

ハナの旅は、今もなお続いている。

ウクレレの音色は、どこまでも、どこまでも、響き渡り続ける。

それは、自由を求める彼女の心の叫びであり、

そして、人々の心に灯りをともす、温かい光でもある。

 

彼女の名前はハナ。

生まれた場所も、育った場所も、もう覚えていない。

それでも彼女は幸せに満ちている。