popoのブログ

超短編(ショートショート)

旅に行け

「貯金するくらいなら旅に行け」

私が学生時代に父がよく言っていた言葉。

 

初めてバイトの給料をもらった時

両親を食事に誘った。

「お前の金に助けられるほど困っていない。

 自分の稼いだお金は自分のために使え。」

 

別に助けるとか、そんじゃなくて

感謝の気持ちだったけど

父は不器用なのか、そう言った。

 

「じゃあ大切にとっておくね。」

「まだ若いのに、残しておいて何になる。

 旅行でも行ってこい。できれば海外に。」

「そんな贅沢できないよ。」

「遊びに行くんじゃない。世界を知りなさい。」

 

それからも私が給料はいる度に

「どこかに行ってきなさい。」と言った。

 

そんな私が初めて行ったのは北海道だった。

普段少し都会の街並みで過ごす私は

TVやネットで、わかっていたけど驚いた。

活気ある漁港。広大な自然。美しい花畑。

「うわぁ。すごい。」

私は行く所、行く所で感動した。

次は沖縄に行ってみた。

美しい海。少し変わった言葉。時間の流れ。

全てにまた感動をした。

「今度はどこ行くんだ。」

「初めて海外に行こうと思う。」

初めて触れる動物。初めて目にする文化遺産

初めての街並み。初めての交流。

全てが新鮮で、全てが私の想像を超えていた。

 

こんな人に会ったよ。こんな場所だったよ。

すごいんだよ。本当すごいんだって!

 

私は家族に、友達に、その感動を伝えた。

 

「パパ!留学したい!」

「行ってきなさい。」

その言葉に父は反対などしなかった。

 

日本に戻った私は気が付いたことがある。

これほど美しい国はない。

これほど安全な国はない。

でもなんでこんなに仕事するんだろう。

でもなんでもっと自己主張しないの。

 

世界を知って私も変わった。

それでも、もっともっと私は知りたい!

 

父が幼い私にくれた地球儀とともに

私は次の目的地を探す。