オレはこの町で生まれた。
オレはこの町で育った。
この景色もこの空気も、すべてが当たり前ですべてが落ち着く。
でもどこか懐かしさすら感じる。
昔よくここで遊んだなあ。
そういえばよくあそこに隠れたなあ。
そういえばよくあそこを走ったなあ。
大好きだったあの子は元気だろうか。なんて考える。
春になれば、新しい服を着たみんなを見かける。
あの子も中学生かあ。みんなの成長を感じる。
夏になれば、近くで花火が打ちあがる。
「ドーン」という音とわずかな振動。
秋になれば、どこからか銀杏のにおい。
あの臭さには慣れなかったな。今でも苦手だ。
冬になれば、たんぽぽの葉に霜がつく。
凍っているのかなあ。何で枯れないの。なんてふと思う。
そんな日常が当たり前で、懐かしい。
今日オレはこの町を離れる。
誰も気にしないか。なんてふと思う。
気にするわけないか。と心のなかで少し笑う。
駅に着くと一本の桜の木。
よくここで待ち合わせをしたものだ。
好きな子が来るかもなんて待った日もあったかな。
また少しバカバカしくなって少し笑う。
またいつかこの木を見みやってこよう。
またいつかこの町を見にやってこよう。
そして・・・
オレと一緒に育ったみんなといつかどこかでまた会おう。