popoのブログ

超短編(ショートショート)

いつかどこかで

オレはこの町で生まれた。

オレはこの町で育った。

この景色もこの空気も、すべてが当たり前ですべてが落ち着く。

でもどこか懐かしさすら感じる。

昔よくここで遊んだなあ。

そういえばよくあそこに隠れたなあ。

そういえばよくあそこを走ったなあ。

大好きだったあの子は元気だろうか。なんて考える。

春になれば、新しい服を着たみんなを見かける。

あの子も中学生かあ。みんなの成長を感じる。

夏になれば、近くで花火が打ちあがる。

「ドーン」という音とわずかな振動。

秋になれば、どこからか銀杏のにおい。

あの臭さには慣れなかったな。今でも苦手だ。

冬になれば、たんぽぽの葉に霜がつく。

凍っているのかなあ。何で枯れないの。なんてふと思う。

そんな日常が当たり前で、懐かしい。

今日オレはこの町を離れる。

誰も気にしないか。なんてふと思う。

気にするわけないか。と心のなかで少し笑う。

駅に着くと一本の桜の木。

よくここで待ち合わせをしたものだ。

好きな子が来るかもなんて待った日もあったかな。

また少しバカバカしくなって少し笑う。

またいつかこの木を見みやってこよう。

またいつかこの町を見にやってこよう。

そして・・・

オレと一緒に育ったみんなといつかどこかでまた会おう。