popoのブログ

超短編(ショートショート)

ショートショート

送り火

「この炎は、皆を導く光であり、私たちをあの世へ送る道しるべだ。」 私は、この集落で生まれ育ち、多くの思い出を刻んだ。 はだしで駆けまわり、勉学に励み、恋愛もした。 そして生前の私は、この集落で医者をしていた。 村人たちの健康を守り、悩みを聞き…

祖父の遺品

舞台は現代。 戦争で戦死した祖父の遺品を整理することから物語が始まる。 久しぶりに帰った実家。 ずっと使われていない部屋。 「おばあちゃん、もうそろそろ片付けよ」 祖父の部屋は今も当時のままだった。 「間違いかもしれない」 「いつか戻ってくるかも…

愛車

「グォーン」と、エンジン音が響く。 ボンネットを開けると、そこには 長年共に走り続けた愛車のエンジンが鎮座していた。 無数の傷跡が、共に過ごした年月を物語っている。 「さよなら、相棒。」 僕は呟き、エンジンに手をやる。 この手で磨いた無数の部品…

村はずれの古井戸

夏の暑い日差しの中、子供たちは井戸端で涼んでいた。 その井戸には、昔、ある少女が落ちたという言い伝えがあった。 「昔、この村に、とても美しい少女がいたんだ。 その子は、村一番の井戸の水が大好きで、毎日ここに汲みに来ていたんだ。 ある日、いつも…

一つの飴の物語

「わあ、懐かしい!」 私は、実家で古いお菓子箱を見つけ、思わず声を上げた。 子供の頃に遊んだおもちゃや、読んだ絵本と一緒に、 小さなガラス瓶に入った飴玉を見つけたのだ。 その飴玉は、少し黄色がかった透明な色をしている。 子供の頃、大好きだったあ…

がんばれ!実況

「みなさん、こんばんは! いかがお過ごしでしょうか。 深夜1時を回りましたが、熱狂はまだまだ冷めやらない! 今、世界が注目する、200m平泳ぎの世界大会。 現地から、その熱気を生中継でお届けします! 夜空に輝く星々のように、水中に輝くトップスイマー…

健康ハート

朝 柔らかな朝日が差し込む部屋で、私は目を覚ます。 昨夜のうちに決意した三つの言葉が頭に浮かぶ。 「まず歩こう」「煙草を吸うまい」「太るまい」。 深呼吸をして、ベッドからゆっくりと起き上がる。 いつもならすぐにスマホに手を伸ばしてしまうところだ…

自由な世界

小さな妖精パステルは、 森の中で魔術師シャドウと出会いました。 シャドウは自分の黒い姿にコンプレックスを感じ、 他の生物から怖がられていました。 パステルはそんなシャドウを優しく励ましました。 「誰だって、誰かの大切な存在になれる。」 二人はす…

許されぬBirthday

今日は、カレンダーの赤い印が示す日ではない。 でも、俺の心は、今日という日を特別な日に塗りつぶしている。 愛する人の誕生日を祝う日。 彼女の本当の誕生日は、もう少し後の日。 でも、彼女が家族と過ごす大切なその日を、 俺が横取りするわけにはいかな…

花園から遊園地へ

昔々、この場所は色とりどりの花が咲き乱れる、美しい花園だった。 春には桜が咲き誇り、夏にはひまわりが太陽に向かって顔を上げ、 秋には紅葉が辺りを赤や黄色に染め、冬には雪が積もって銀世界へと変わる。 人々はここに訪れ、花の香りに包まれながら静か…

錆びついた銃

小さな村の広場には、 錆びついた銃が突き刺さったままの記念碑があった。 子供たちはそれを「鉄の墓標」と呼んでいた。 それは、かつて村を襲った戦いの終焉を告げるものだった。 銃口からは、いつまでも枯れない赤い花が咲き続けていた。 村の古老、ハル爺…

時をかけるタクシー

東京の雑踏の中、古びたタクシーが停まった。 運転席には、人懐っこい笑みを浮かべる老練な運転手、松田が座っている。 「どこまで行きましょうか?」 後部座席から現れたのは、見慣れない服装の女性だった。 「うわさを聞いたんです」 「なんですか?」 「…

浴衣の夏物語

夏の夕暮れ、小雨が降りしきる日本の街並み。 石畳を歩く足音が響き、路地裏からは 提灯の温かい光が漏れてくる。 そんな中、一人の外国人の女性が、 両手に抱えた浴衣の箱を抱えながら、 小さな旅館の玄関へと足を踏み入れた。 彼女の名は、オリビア。 アメ…

レモンサワー

熱い陽射しが照り付ける、ある土曜日の午後。 エアコンの効いた部屋で、彼はソファに深く腰かけていた。 会社でのプレゼンが成功したはずなのに、心はどこか晴れない。 毎日の忙しさと暑さにやられ、体も心も重だるい。 今日は休日。ゆっくりしよう。 そう思…

ねぶた、そして二人・・・

青森ねぶた祭り。 その華やかな光と熱気に包まれ、 夏を迎えたのは、都会から来たカズヤと、地元出身のミホだった。 カズヤは、ミホの熱烈な誘いでこの祭りに参加することに。 都会の喧騒に疲れていた彼は、 静かな青森の夏に少しばかりの癒しを求めていた。…

デザート王国

会場の食事を済まして、 スイーツバイキングを冒険者のように歩き回る姉妹。 「わぁ、ケーキがいっぱい!」 「お姉ちゃん、このバイキング、宝探しみたい!」 キラキラした目でスイーツコーナーを見つめるのは、 小学2年生の妹、あかり。 お姉ちゃんのまゆは…

野外ライブ

静まりかえった早朝。 まだ夜明け前の薄明かりの中、 巨大なステージが姿を現す。 数えきれないほどのスポットライトが、 まるで眠りから覚めたばかりの 巨人の目を輝かせるように、 ステージを照らし出す。 会場周辺は、すでに 熱気に包まれていた。 遠方か…

特別な一戦

未来都市ネオ東京。 ここに、プロレス界の頂点を目指す 若きエースの“龍”がいた。 しかし、経験不足と若さゆえに、 ベテランレスラーたちに苦戦を強いられ、 常に完璧なパフォーマンスを求められていた龍は、 誰にも弱みを見せれずに、孤独に苦しんでいた。 …

幸運な一日

深い闇に包まれていた世界が、 少しずつ明るさを増していく。 それは、まるで新しい一日の 始まりを告げるよう。 主人公のあなたは、 そんな朝焼けの中、 静かに目を瞑り呼吸を繰り返していた。 今日は、特別な日。 占いや暦によると、 一年で最も幸運を引き…

浪速のロッキー

大阪の下町、夕焼けに染まるボクシングジム。 汗と鉄の香りが漂うその一角で、老練なトレーナーは、 若きボクサーを相手にミット打ちを行っていた。 「もっと強くならなあかんねん!」と叫び、 パンチを繰り出す若きボクサー。 彼は、幼い頃から喧嘩に明け暮…

夢の国行き列車

小さな町に住む、好奇心旺盛な少女、アリス。 彼女は、いつも窓の外を流れる景色に見とれていた。 ある日、アリスの家に、不思議な招待状が届く。 そこには、"夢の国行き列車"の切符と、 "あなたの夢を連れてきてください"という言葉が書かれていた。 アリス…

いつもありがとう

昔ながらの大きな家で、 陽菜は一人静かに本を読んでいた。 窓の外には、夕日が沈み、部屋は薄暗くなってきた。 ふと、背中に何かを感じた陽菜は振り向くが、何もいない。 「おばあちゃん…」 思わず、おばあちゃんの名前を呟く陽菜。 陽菜のおばあちゃんは、…

氷の仙人

とあるところに、かき氷が大好きなおじいちゃんがいました。 そのおじいちゃんは、ただのかき氷好きではなく、 かき氷を作ることに人生を捧げた人物だったのです。 ある暑い夏の日、 おじいちゃんはいつものように、 涼を求めて山奥の小屋を訪れました。 し…

テレワーク

東京タワーを一望できる高層ビルの一室。 社長は、モニター越しに映る社員たちの顔を見つめていた。 新型コロナウイルスの影響で、 テレワークを導入してから早二年。 当初は不安もあったが、社員たちの業務効率向上や ワークライフバランス改善を実感し、 …

庶民の声

舞台は、高度経済成長期の日本。 表向きでは、 人々の生活は豊かになりつつあるように見えたが、 実際は、物価の高騰が続き社会問題となっていた。 特に、食料品の中でも米の価格が高騰し、 庶民の生活を圧迫していたのだ。 「おとうちゃん。今日も麦飯なの…

タイムスリップ

40代になった今も、心のどこかで 当時の熱気を懐かしんでいる男女が、 あるきっかけで再び集まる。 華やかな照明の下、懐かしいディスコ音楽が流れ始めると、 彼らの心は若き日にタイムスリップしていく。 ________________________…

愛と記憶を紡ぐ

静かなカフェ。 テーブルの上には、アルバムとデジタルカメラ。 新郎の翼は、アルバムをめくりながら、 新婦の澪の笑顔に何度も見入っていた。 二人の出会いは学生時代。 部活で一緒になり、互いの夢を語り合い、 いつしか惹かれあっていた。 「澪、このビデ…

Tシャツを作るぞ

この小さな町にあるダンススクール。 そこには、バレエ、ヒップホップ、ジャズなど、 様々なジャンルのダンスを学ぶ子どもたちが集まっていた。 そのスクールは活気あふれるもので、 みんな、それぞれの夢に向かって、一生懸命練習していた。 ある日、ダンス…

民主主義の花

遥は、生徒会で学校改革を進めていた。 古い校則の見直しや、 生徒主体のイベント開催など、 様々なアイデアを提案する。 しかし保守的な先生達からの反対にぶつかる。 「今まで通りでいいだろ」 「先生たちに任せなさい」 「ああ。ダメだ。ダメ」 特に、生…

勇気

少年は、夜になると布団の中に顔を埋め、 なかなか眠れなかった。 窓の外から聞こえる風の音や、 壁の模様が、彼の想像力を掻き立て、 様々な形の怪物に見えてしまう。 少年は何度も母親に「怖いから一緒に寝て」と頼んだ。 母親は優しく少年を抱きしめ、 「…